肩を落としたままでは何もできない。
とは言え、なぜかスケールの大きすぎることで、本気で落ち込んでいたけれど。
そんな、落ち込んだ状態でも、次に進まなければと、重い足を前に踏み出す。
まず、プロデューサーに今後のスケジュールの確認をする。
最短で上映する可能性があるとすればカンヌだったからそれを基準に完成を目指していた。
仮のゴールだ。
そして、今、梯子を外されたような状況で、どこの完成を目指すかになってくる。
当然、スケジュールは変動するからだ。
返信が来て、スケジュールについて改めて確認する。
まずは初号試写。
そして、マルシェ・ドゥ・フィルムが待っている。
カンヌ映画祭が、世界最大と言われるゆえんは、映画祭の規模と歴史だけではない。
映画界の権威である映画祭と、それだけでは足りないと始まった各部門。
そして、世界中の映画人が集まる南フランスの風光明媚な観光地では、世界最大のフィルムマーケットが開かれるようになった。
それが、マルシェ・ドゥ・フィルム。
先日の香港と、アメリカと並んで世界三大マーケットと言われるほどの大きさだ。
基本的に映画祭では、関係者が集まることもあって、マーケットの併催が多いけれど。
このマルシェ・ドゥ・フィルムは、その中でも規模が違う。
12000人以上もの、映画関係者が集まるマーケットだという。
WEBのトップページにも記載されている。
12000人以上の関係者、3200人のプロデューサー、1200人のセールスエージェント。
1750人のバイヤー、800人の映画祭プログラマー。
世界中の映画関係者が一堂に帰すると言っても決して過言ではない。
前回の香港フィルマートでは、完パケを持っていくことが出来なかったけれど。
今回のマルシェ・ドゥ・フィルムでは、完パケを持っていくことが出来る。
準備できるなら、試写だって可能だという事だ。
実際、3桁の作品の試写が期間中に行われるという。
だからこそ、カンヌ映画祭に、誰もが参加したがるのだ。
どの部門であっても、この映画祭期間に話題になった作品は、必ず世界中で上映されるという。
世界中の映画関係者がそこに集まるからこそ、活発に映画評論が行われるし、情報伝達も早い。
北野武監督の「ソナチネ」なんかも、あっという間に話題になったとどこかで読んだ記憶がある。
そこでは誰もが映画を愛して、誰もが新しい映画を探している。
上映される映画祭参加は、誰もが望むべくして存在している。
見せたいと、観たいの、需要と供給が完全に合致している。
有力なバイヤーの誰かが、絶賛していたらしいという噂だけでも、大きな大きな評判になる場所だ。
もちろん、日本での上映の前に、再度、編集の手を入れることも出来る。
だから、今は、海外用の完パケを、ここで決定!と作り切ってしまうことだ。
映画祭に参加しなくても、「Seven girls」は、カンヌに行くのだ。
まだ、少し、ああ、選ばれていたらなぁなんて、考えてしまうのだけれど。
再起動までは出来ない。
自分の中で切り替えて、初号試写の確認をしていく。
試写室を借り切っての関係者試写にするか、プロジェクターのある個室居酒屋での打ち上げを兼ねたものにするか。
先週のうちに監督に確認して、場所探しも、別で依頼しておいた。
各スタッフさんに、連絡を取る。
電話で話すスタッフさんは、いつものように応対してくださる。
初号後に、手を入れたい箇所が監督から出てこない限り。
ここで、映画が一度、完成するはずだ。
再起動できないけれど、再始動だ。
さあ。
仕上げ作業に入ろう。