2017年04月04日

こっちからしかわからないこと。

舞台俳優が映像現場に行くと、声がでかすぎると言われる・・・なんて良く聞きます。
まぁ、それはそうです。
客席の全てに届くように発声しているわけでして、それをマイクで拾ったらやっぱり、でかすぎるわけです。
それは、もう、先輩も含めたくさんの人から聞かされてきまして。
声ありきの芝居ってのも考え物なのかもな、ぐらいに思っていたのですけれども・・・。

撮影時に聞いた話と、今の整音作業で、そんなの伝説に過ぎないとわかりました。

いや、確かに、急に大声を出してしまうと、マイクで拾った音声が割れちゃうんですね。
特に、アングラや第三世代の俳優たちは、それはもう大きな声で芝居をしていたので。
映像現場に行って、それを言われたっていうのはすごくわかるのです。
でも、今の録音機材は、リミッターも進化しているし、リハーサルで調整すれば、そこまで割れないはずです。
後は、ピンマイクがそこまで発達していなかった頃は他の役者とのレベルの差が激しくて、調整しづらかったのかと。
でも、それも、今の機材で考えれば、大したことじゃない気がします。
整音作業も含めて、音声のレベルの差の調整なんて、そこまで大変なことでもないぞと。

もう一つあるとすれば、それは、空気感です。
特に、監督や助監督からすれば、今、この場面でその音量いらねぇだろ!っていう事だと思います。
撮影現場の空気感で考えたら、響く声なんか欲しくないよって時があるのだと。
芝居はその時の現場の空気感そのものになっていくので、繊細な部分です。

でもね。
撮影現場で録音さんに言ったんです。
おいら、声、大きいので、なんか、スミマセン、、、って手が空いている時間に。
色々、調整するのが大変だろうなぁって思って。
そしたら、逆に褒められたのです。
いやいや、こっちはありがたいです。皆さんちゃんと声が出てるので、拾いやすい!って。
あれ?大きな声注意報をずっと聞いていたのに・・・なんだ?この感じ・・・?って思ったのですけれども。
編集から整音作業をしていて、ようやくその答えが見えてきた感じです。

正直、音だけでいえば、録音できないことが一番最悪なんですね。
小さな声で話しても、それが収録できていなかったら何の意味もない。
録音したものを小さなボリュームに出来ても、小さく録音されているものを大きくするのは難しいのです。
まぁ、かろうじて小さな声で録音されていたとしても、それを持ち上げれば、ノイズも大きくなってしまう。
そう思って、ドラマや映画を観たら、売れている人、評価されている人は、ちゃんと発声してますね。
もちろん、小さな声の場面もあるけれど、ただの小さな声じゃなくて、発声の基本は出来てる。
日常会話みたいに見せておいて、声は声で、出せている。
その辺がわかるようになったなんて、自分もベテランなんだなぁなんて思うけれど。
より日常会話に近いシーンっていうのは最近の映像で増えていますけれど、そのまま日常じゃないってことです。

で、やっぱり、ハッキリとしているのは。
もう特に、音声の波形を見れば、すぐにわかっちゃうのですけれども。
声の大きさというよりも、やっぱり、声の太さなんだなぁと。
もちろん、整音作業で、声を太くすることも出来るのですけれども。
元々、太い声を持っている人を削っていく方が、やっぱり、結果が良いです。
鍛錬されている声とされていない声では、もう、ビジュアルではっきりと波形に現れます。
そして、その声の方が編集後、MA後に、よりピックアップされて聴こえてくるようになります。
だから、舞台俳優は声がでかいと怒られるというのは、実はもうとっくにまやかしなんじゃないかなぁと思います。
あとで、編集しやすい、太い声を日頃から鍛錬しているかどうかなんて、録音部さんにはすぐにばれます。

声というのは圧倒的な個性でして。
もう声だけで、存在感っていうのが出るのだと、つくづく感じています。
そして、そこを鍛錬していれば、もっと良い芝居になったのに・・なんてことがきっとあると思います。
現場の空気感まで気にするのであれば、太くて小さな声ぐらい操れないと、実は役者じゃないんだなって。
そんなことを思った次第です。
映像で、映っていなとかもそうですけれども。
収録できないような表現は、結果的に表現にはならないという事だと思ったわけです。

仁義なき戦い1の最後の菅原文太さんのセリフ。
「やまもりさ~ん・・・」
あれは小さいけれど、太くて、腹に響く、発声だったなぁと思い出してみたり。

だから、舞台俳優は声が大きすぎるっていうのは、とっくに古い表現かもなと。
そんなふうに感じています。
小さな声で芝居したら、映像っぽいとか考えていたら落とし穴です、それは。

こっち側からしかわからないことなのですけれど・・・。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 04:49| Comment(0) | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする