2017年03月24日

再起動

MAが予想よりも、時間がかかるのにはいくつかの理由がある。
一つは、撮影日によって、ガンマイクと、ピンマイクの数が変わったこと。
もう一つは、アフレコで演出変更の箇所がいくつかあったこと。

アフレコに元のセリフをただ差し替えると、違和感が強く出る。
なぜならガンマイクには元のセリフも含めた音声が入っているからだ。
だから、ガンマイクの音声を消す。
そうなると、空気感であるとか、足音であるとかも同時に消えてしまう。
だから、そこに更に、空気音を追加して、足音を追加していく。
それでも、質感に違いがあったり、距離感に違いがあると、妙に浮いてしまう。
特に前半部分には撮影初日のピンマイクが足りていないシーンが多く、非常に困難だ。

それでも、そういう下準備や処理をある程度してまとめておいて先日のMAの予定だったけれど。
まとめておく作業が、想像以上に進まないままで、当日は音楽の微調整なども入り、MAに至らなかった。
とは言え、当初のスケジュールから考えれば、とにかく、スケジュールを練り直さなくてはいけない。
スタジオが空いている日程に、再度、MAに入るとして、それまでに整音を煮詰めていかなくてはけない。

エンジニアでもない限り、音声にコンプレッサーをかけたり、空気感を加えたりというのは、中々難しい。
音の持つ特性をどこまで理解しているかで、全然、作業効率も変わってくる。
それでも、何もできないかと言われたらそうじゃなくて、おいらにも出来ることはある。
例えば、トラックごとの整理であったり、インデックスやグループ化など、処理しやすい状態にすることだ。
だから、同時進行で、自分でも出来ることがないか、スタジオツールをインストールしてみたのだけれど。
どうも、何かのファイルエラーで立ち上がらないことが分かった。

実は、インストール後、かつて劇団でお世話になった方に操作方法など教えてもらう予定だった。
・・・というか、むしろ、整音をしていただけないか確認していた。
快諾していただけたのだけれど・・・
すでにエンジニアを引退されて数年経過しており、マシン環境的に厳しいことが分かった。
だから、おいらの端末にインストールして、目の前で操作してもらって、自分の出来る範囲がわかれば。
そのあとのスケジュールをもう一度組み立てられると思っていたのだ。
けれど、そのインストールがうまくいかない、そしてKORNさんの助手の方とのスケジュールも合わない。
万事休した。

考えて考えて、頭が痛くなって布団に逃げ込むようにもぐりこんで。
朝起きても、やっぱり、考えていた。
今から外注に出すとなると、予算的には、とてもじゃないOVERをしてしまう。
例えばその予算を用意したとしても、それは、この企画ではないんじゃないかという思いがある。
だって、この企画は、クラウドファンディングで集めた皆様の資金で動いているのだから。
別からお金を用意することは、どこか筋道が違うんじゃないかという思いがある。
予算内で納められる方法を探さなくてはいけない。

悩んだまま、出かけて、外の空気を一息吸った時に。
あ!と、声が出た。

この企画は、劇団の代表作を映画化しようという企画だ。
だからこそ、劇団で普段お世話になっている方の力をそのまま映画にしたいという思いがある。
監督も、俳優も、音楽も、MAも。それだけじゃなく。
だから、おいらの頭は少し、硬くなっていたのかもしれない。
以前、劇団でお世話になったエンジニアさんの名前が、KORNさんや監督、音楽監督から出たのもある。
それが、最後の一本の蜘蛛の糸だと思い込みすぎていたのかもしれない。
外注か、その方の力を借りるか、二択の頭になっていた。

瞬間、降りてきた。
おいらは、バンド活動をしていた時に2枚のCDアルバムの自主制作をしている。
1枚目と、バンド前のプレCDは、KORNさんがRECもMIXもしてくださった。
あの時も、無茶な企画だったけれど、無茶なりになんとかなんとか道筋を見つけていった。
2枚目のアルバムを出す時、おいらたちは、一つテーマを持ってしまった。
「I LIVE YOU」というアルバム。
バンド全体で一発録音のライブ盤のようなアルバムを作りたいねという話になった。
もちろん、予算的な意味合いも含めて、そういう方向性になった。
そんなことどうやってやればいいんだろう?と、八方手を尽くして尽くして、準備していった。
深夜のライブハウスを格安で貸し切り、あとは、その環境でどうやってRECするのか?という話だった。
KORNさんの器材だと、スタジオ外に出てのRECにはそうとう縛りがきつかった。

その時にお願いしたエンジニアさんの顔が急においらの頭に降りてきた。
劇団の・・・という頭だったから、劇団外の自分のバンド活動をどこかで除外していたのかもしれない。
しかも、ミックスの時に伺ったあの街に、今回のMA助手さんも住んでいるのだ。
最寄り駅じゃないか・・・。すぐ近くに教えてくれる人がいるじゃないか。
フリーのエンジニアさんで、LIVERECやPAまで、何でもやってしまうような方だ。
むしろ、整音作業は、LIVERECしているから、慣れていらっしゃる。
スタジオRECよりも、整音作業が多いはずだ。
恐らく、フィールドレコーディングもしたことがあるはずだ。

即KORNさんに確認を取る。
もちろん、共通の知り合いだからだ。
KORNさん的にも余りにも今回の企画からは離れているから名前を失念していたのかもしれない。
すぐに、連絡してみましょうよ!との返信。
久しぶりに、おいらは、電話を掛けた。

電話の向こうから聞こえてきた声は、あの時のままだった。
相談に乗ってほしい旨を恐る恐る伝える。
なんと、その電話で、いつお伺いするという所まで決まった。
昨日まで悩み続けていたのがウソのように、するすると話が進んでいく。
なんて、ありがたいことだろう。
KORNさんのMA助手さんにも、その日程で、伺うことを伝える。
まさか、自分の住む街だと思っていなかったから、運命的ですね!なんて返信も来る。
KORNさんから、データの状態と、目指すゴールだけ連絡しておいてもらう。

そこまでの段取りが組めたから、KORNさんと、MA日の再設定をする。
その日までに、整音作業をどうやって終わらせられるのかが勝負だ。
その為に、まず、相談に行くしかない。
そこで、教わって、景色が変わるかもしれないし、他の道も見えてくるかもしれない。
ただ、明らかに昨日までとは違う。
前に進んだのだ。
ここから、限られた日程で、その作業を完了させていくしかない。
少なくても、そこで景色が変わらないようなら、別の道を探す覚悟も出来る。

それにしても。
また、経験だった。
また、経験が助けてくれた。
バンド活動をやっていた時の、音源製作は、今、様々な局面で役立っている。
それこそ、編集だって、音源製作をして、シーケンサーというものに慣れたからすんなり覚えられたのだから。
自分の過去が、歴史が、どんどん今になって生きてくる。
あの笑顔に、もう一度、会いに行けるなんて、思ってもいなかった。

それに、あの町は、親友が眠る街でもあるんだ。

進むしかない。
もう、一本道だ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:55| Comment(0) | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする