映像の総仕上げの前のチェック日。
監督が仕事で少し遅れるとのことで、先に向かう。
撮影監督の吉沢さんと、同じく、撮影の山崎さん。
既にグレーティングは始まっていて、到着するなり、ここのシーンなんですけど…と始まる。
もちろん、監督次第ですよと答えるしかないのだけれど、その時点で、ドキドキし始める。
時間をみて、監督を迎えに。
二人で、差し入れの買い出しをして、もう一度向かう。
そして、本格的に、グレーティングチェックが始まった。
吉沢さんの気になっている映像から確認していく。
・・・ここなんですけど。
監督が見てOKを出したり、微調整を続ける。
ある程度、進んでから、他で気になっている部分はありますか?と、聞かれる。
何十回も観てきた映像だから、もちろん、すぐに思い浮かぶ。
自然光の照り返しが変になっている箇所や、他もいくつか確認。
おいらは、観ているだけで、監督と撮影監督にお任せで良いと思っていたけれど。
想像以上に、色々と聞かれて、色々と確認することが多かった。
もちろん、データをどんなふうに持っているか、その後どうすり合わせていくかも含めて。
ある程度、チェック確認後、部屋を暗くして頭から全て通して観ていく。
撮影データから始まって、切り出して、配置して、確認してを何度も何度も繰り返した映像。
何十回も観ているから、変化がある場所はすぐにわかる。
色味だけじゃなくて、ちょっとした動きまで、修正箇所が手に取るようにわかる。
全体的にバラバラだった色味が統一されていることもわかった。
ふとした瞬間に、今まで感じなかった感動が増えているシーンもあった。
そのあとの調整はじっくり。
もちろん、今日中に終わる作業じゃないから、直しの利かないところを中心に。
グラフィックボード2枚のパワーは自動計算のスタビライザーも短時間に計算する。
やはり、冒頭の部分とラストの部分がどうしても中心になっていく。
モニタで確認しながらも、スクリーンだとこう出るというのも想定しながら。
ある時間になったら区切って、食事に行く。
食事に行くことは、決定だろうなと思っていたから、時間をみて切り出した。
呑もう飲みましょうと話していた吉沢さんと初めて、杯を酌み交わす。
刺激的な映像現場の話は、すべて自分の身になっていく。
某有名俳優の話や、某有名ドラマの話。
おいらは、芝居を始めた時、先輩と呑んでたくさんのことを教わった。
呑みの席があれば必ず顔を出して、先輩の隣にへばりついて、話を聞いていた。
酒の席になって出てくる話は、やはり、勉強になる。
自然、セブンガールズの話にもなる。
この厚い内容を5日で撮影したこと。
舞台をやっているおいらたちが思っている以上に、すごいことなんだと言ってくださる。
そして、撮影時のチームワークが感動的だったとまで・・・。
もっと良くしたいって思うんです!なんて言ってくださる。
アルコオルが、ふわりといい気分にさせる中で。
この作品への思い入れが、様々な角度から集まっていることが、心にしみこんでくる。
山崎さんの好きなシーンの話ひとつとっても、それだけで、この作品を製作した意義にまで感じてしまう。
店が終わる時間にお開き。
監督とも別れてから、電車内で反芻していたら、あっという間に立ったまま眠ってしまった。
壁によっかかっていたとは言え、よく倒れないで、寝過ごさないで済んだと思う。
細かい部分の修正が済んだ時、どんな映像に生まれ変わっているだろう?
夢の中では、あの撮影現場の日に戻っていた。
あそこで確かに、限られた時間の中で、おいらたちは撮影をやりきったのだ。
間違いなく、映画にはその空気がにじみ出ている。
吉沢さんと山崎さんも、あの空気の中にいたのだから。
映っている映像も大事だけれど、映っていない空気も映画の中に閉じ込めていくような作業だった。
この映画は。
映画の上演時間の数十倍の時間の物語が裏に流れている。