香港フィルマートに参加している方々のレポートや写真を観る。
想像をはるかに超える規模。様々なイベント。
そこでは、映画を、テレビ番組を・・・映像の全てを商材として扱っている。
SNSに投稿された写真を見るだけでその熱気が伝わってきた。
帰宅して、効果音の貼り付けに取り掛かる。
2mixに重ねていくから、実に混ざりが悪いのが気になって仕方がない。
もちろん、MAでミックスすれば全く変わるのはわかっているのだけれど…。
まぁ、ミックスしても不自然ならMA時に削除してしまえばいいだけなのもわかっている。
目標としていたタイムコードまで順調に進む。
2周するぐらいのつもりでやらないとMAに間に合わなくなってしまう。
オープンタイプのヘッドフォンで編集整理をしていた頃とは違う。
密閉型のヘッドフォンで効果音の配置をしているから基本的に何も聞こえない。
外部の音が聞こえないと、自然と集中していくから、やはり疲れていく。
まぁ、仕方がないさ。
カラーコレクションの集合時間の連絡も来た。
監督と待ち合わせをしていくことになるだろうか。
おいらの勝手知ったる街であり、先日、うかがったばかりの場所だ。
監督が迷うぐらいならその方がいいだろう。
あの辺でコーヒーショップがなかったことだけが気になるけれど。
明日も効果音をやろう。
目標としているシーンまで行けるかどうかはわからないけれど。
一応、目標は設定しておく。
ここまでやらないと寝ないと決めてしまえば、もう、やるのみだ。
そんなに大変なことでもない。
カラーコレクションも、MAも。
どちらも、とってもとっても時間のかかる作業だ。
本来なら、この尺の映像であれば、どちらも数日かかるような大掛かりな作業になるはずだ。
けれど、そこでも、今回の企画が生きてくるだろう。
短期間で、同じ場所で、殆どの撮影をしているという事だ。
もちろん、日は落ちるのだから、明るさは刻一刻と変わるけれど。
それでも、同じ季節、短い期間、同じセットで撮影したのだから、様々な条件を既にクリアしている。
色の調整も、音の調整も、季節が違ったり、場所が違うだけで、そこの調整に時間がかかる。
ましてや、1つのシーンをカットごとに分けて、別日で別の場所で撮影しようものなら大変だ。
でも、基本的にどのシーンも、連続して撮影している。
同じ室内シーンなら、同じカラーを載せれば自然と合ってしまう場合もあるだろう。
もちろん、全てが合っているわけではない。
映像ならAカメとBカメで、まったく質感が違う。
音声ならガンマイクとピンマイクとアフレコで、まったく質感が変わる。
そこにはどうしたって時間がかかるのは先刻承知の上だ。
劇団なんかをやっていると、当たり前のことだけど、全てが同時進行になっていく。
演者としても、制作面でも、様々な面が同時進行で本番に向かっていく。
映像の世界は、規模の違いもあるから、圧倒的に分業が進んでいる。
役者とスタッフの間には一本の線があるし、スタッフでも役割ごとに領域がある。
ましてや、映像製作と、営業なんて、完全なる分業になっている。
映像を作っているスタッフさんの中で、その映像を営業している人の顔すら知らないなんて普通なはずだ。
まぁ、それは大きな団体になれば当たり前のこと。
工場で働く人が、その商品を売っている人の顔を知らないなんて、普通のことだ。
それは、わかっているのだけれど、劇団というスモールパッケージにいるおいらは、その線が曖昧になっていく。
だから、なんていうか、今、香港で営業をしてくださっている方にも、会ったことがないのに親近感を感じている。
いや、海外映画祭であったり、フィルマートであったり、出展する計画を立ててくださった時点で。
この企画の趣旨を、深く理解してくださっているのだという、信頼感を持っている。
映像を磨くこと
音声を磨くこと
海外で営業していること
おいらたちの作品のために、今も動いてくださっている人がいることを忘れてはいけない。
いや、おいらたちの作品ではない。
関わってくださった全ての人の作品だ。
製作だけじゃなくて、営業も含めて、全ての関係者の作品だ。
おいらのやれることはたった一つ。
自分に出来ることは、全てやるだけだ。
あーあ。
おいらは、役者をやりたくて、役者をやっているんだけど。
本当に、役者ってのは、勝手と言うか、わがままな生き物だよ。
なんにも知らないで、芝居だけするのが役者だなんて言ってさ。
自分の芝居がその映画のほんの一部でしかないと、どれだけ、深く理解できるだろう?
スタッフさんのおかげですなんてよく聞く言葉だけれど。
本当の意味では、なかなか理解できないだろうなって、今、居る場所にいればわかる。
まぁ、役者は役者で、つらい部分もあるのだから当たり前なんだけどさ。
でも、おいらは、これを体験できていることが、財産だなって思える。
頭じゃなくて、現場で体感している以上の財産なんかないよ。
本当に優しい人。
そうなりたいと、ガキの頃に思った。
それは、ただ甘いだけの、オモテヅラの良さじゃない。
厳しい人かもしれないし、面白い人かもしれないし。
でも、都合の良いひとではないな。
おいらは、そうありたいからこそ知りたいのかもしれない。
これは誰が思い描いた夢だい?
そうさ。
それだけは現実になった今も忘れない。