2017年03月11日

画竜点睛

グレーティングチェックの日程の連絡が来た。
グレーティングとは、つまり、カラーコレクションのこと。
先日旅に出した映像の色味調整前の確認という事だと思う。
監督と撮影監督にお任せしようかと思ったけれど、直接連絡が来た以上行く。
来れますか?と聞かれて、お任せします!と言う風にはならない。

先日のデータの受け渡しは、データの書き出しや変換をしないで済んだ。
つまり、撮影した映像をそのままネイティブで、組み立てたデータを渡せた。
撮影時の情報がそのまま反映されているからカラーマップもそのままということになる。
PhotoshopやIllustratorをやっている人ならなんとなくわかるけれど。
カラーマッピングが変わると、その後の色の調整も変わってしまう。
フルカラーは画像でも映像でも複数の色を混ぜることで、フルカラーを実現しているからだ。

RGBであれば、赤緑青の各色情報をブレンドすることで、フルカラーに見せていることになる。
色深度8bitであれば、2の8乗の階調を持っていることになるから、赤だけで256段階の色を持っている。
つまり、赤(256)×緑(256)×青(256)で、約1670万の色を表現できる。
人間の目ではとてもじゃないけれど、判断できないぐらいの色数だ。
今回のメインカメラの映像は10bitでの撮影だから、2の10乗、1024階調の3乗のデータになる。
そうなってくると、もう、とてもじゃないけれど、人間の目でなんか確認は出来ないと思うだろう。
それは、もちろん、そうなのだけれど、それは、未加工ならばと言う条件が付く。
例えば、全体に少し明るくするとか、全体的に暗くしていこうとしたときに。
階調が深いほど、黒はつぶれずに、白は飛ばなくなるという事だ。
加工すれば当然、色情報が限定されていくから、どんどん色数も階調も失っていく。
暗い所は暗く、明るい所は明るくコントラストを上げていくと、デジタルノイズが乗ってしまうのだ。
更にその映像を、データの受け渡しなどで、圧縮したり変換したり、場合によってはコンバートもする。
例え、非圧縮や可逆圧縮であったとしても、わずかに色情報と言うのは失われてしまう。
だからこそ、元になるデータは、豊穣であればあるほど良いという事になる。

現実的には色情報がRGBではなくYUVという情報であったりするし。
ネイティブな映像データが10bitであったとしても、カラーコレクション時の内部処理が16bitや32bitだったりもする。
だから、完全に正確な情報ではないけれど、おいらの持てる知識から判断すればそういうことになる。
視認できるほどのデジタルノイズが出ない範囲で、これを調整していくのだ。
カラフルなイメージになることも、彩度が低いイメージにすることも。
どこか、セピア調な少しフルさを感じる映像にすることも。
全ては、こんな基礎知識があったうえで、感覚的な見た目で判断していくことになる。
恐らく、デジタルになってからはその基礎知識がないと、難しくなっただろう。
フィルム時代は、現像だったわけで。
もちろん、デジタルに取り込んでカラコレしたのちに、再度、フィルムに現像するという時期もあっただろうけれど。

だから、実際に撮影した撮影監督が当時の露出、露光などを加味したうえで狙っている色を出す。
それを、カラーリストが、実現していく。
監督がその色味、カットごとの繋がりを確認して、OKを出す。
そんなチェックを繰り返すという作業になるのだろうと予測している。
当然、途中途中で微調整は入るのだろうけれど、大まかな流れとしてはそうなるはずだ。
だから、おいらが行く必要なんかないのだ。
その作業工程、チェック、においらが入る余地なんかどこにもないからだ。
必要がないのだから行くことはない。
むしろ、カラコレ後の映像を楽しみにしていたりもした。

でも、やはり、この映画の完成までの最後の一瞬まで、おいらはいるべきなんだなと理解した。
当たり前のように、グレーディングチェックに来れますか?と連絡が来る。
監督にお任せしますねなんて、ついこないだ自分の口が言っていたのに。
もちろん、行けますと即答してしまう。
単純に、なんだよ、そこは来ないのかよと思われるのが嫌だって意味もあると言えばある。
でもそんなことじゃない。
画竜点睛を欠くようじゃいけないのだ。
実際に映画館で流れる映像の最終工程。
待っているというのは、どうやら、この作品の生まれた過程や、コンセプトから外れてしまう。

どうせ行くのであれば。
監督とは違う立ち位置でそこにいるべきだろう。
監督は、もうエモーショナルに、見た目でどんどん決定していけばいいのだ。
撮影監督の提案、監督の承認。
その間で、ただ見ているだけになるとしても。
別の角度を持っていられるように、最低限の知識だけは詰め込んでいこうと思う。
幸いLightroomで、画像RAWデータの現像なども多少やっていた分、作業の意味は分かるはずだ。
その辺のことは恐らく、監督にはわからないことのはずだから、そこの補助が出来るはずだ。
暗くしたい→これ以上は無理です→コントラスト比でイメージ変わりませんか?などだ。
おいらに出来ることは、そこにいて、作業をみて、そのまま終わればベストな位置という事だ。

絵に描いた竜にいよいよ瞳が入る。
その瞬間、天を駆けるのだ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 14:19| Comment(0) | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする