2017年03月22日

水が満ちるほど、そっと運ぶこと

今日まで、何度も何度も、壁にぶつかってきた。
全てにおいて、一度でもすんなりと進んだことなんかない。
そのたびごとに、頭を悩ませて、アイデアを出して、時には助けを求めて。
どうにかこうにか、今日まで乗り切ってきた。
ある意味では、もうすでに壁の慣れっこ。
通常ならありえないような厳しい局面も乗り越えてきたのだ。

慣れっこだけれど。
慣れっこなんだけど。
頭が痛くなるほど、考える。
どうすればベストか。
どうやればより良いのか。
絶対に答えがあるし、絶対に出来ないわけがない。

土台、馬鹿なのだ。
この企画自体が普通に聞けばバカみたいな企画なのだ。
そんなこと、どうやってやるんだよ?という局面が来るのが当たり前な企画なのだ。
例えば、世の中には根性であったり気合で乗り切るという場面は何度も訪れるけれど。
残念ならが情熱や気合でどうにかなるような場面なんか、実は、ない。
冷静に分析して、冷静にアイデアを出して、集中しながら、俯瞰で全体を観るような。
そういう場所からしか、この壁は破壊できないのを学んできた。
一瞬、立ち止まって、呼吸を整えて、ベストとは何かを模索する。
そこに、発想の転換が下りてくるはずなのだ。
今回も同じ。問題点を冷静に判断すれば、きっと、答えが出てくる。

一人。
恩人がいる。
何度かピンチを救ってくれた愛情の人。
この企画のクラウドファンディングの達成の瞬間、飲みに行こう!といの一番に連絡をくれた人。
いつか朝まで酒を飲んだ人。
いつも、陰から応援してくださる人。
その人の名前が挙がった。
いつも連絡するときは無理をお願いしてしまうような気がして、とても連絡しづらかったのに。
連絡をすると、快く、返信をくださる。
今回も、返信をくれて、むしろ、申し訳ないなんて言ってくださる。
そうだ。
そうだ。
この企画は、こうやって、おいらたちの歴史、関わってきた全ての皆様の力で出来ている。
あまり一方的に頼るようなことはしないけれど、ほんの少しだけでもかかわってほしい。
もちろん、何もしなくても、歴史に関わった人すべての映画なんだ、これは。

KORNさんの助手の方も、実は、劇団の公演に何度か来てくださっている方だ。
あの公演の、あのセリフが忘れられないなんて話してくださる。
なんとか、力になりたいですなんて言ってくださって、心に落ちていく。
監督の昔まで知っていたり、このBLOGも読んでいてくださっているという。
そういう力は、おいらは、何よりも信じたいと思っている。
そういう思いを、一つもこぼさないで、大事に運べるような器になりたいと心から思う。

映画は産業で、そこで仕事をして生活しているひとがいる世界だ。
けれど、だとしたら、ものすごい利率の悪い産業だと思う。
もちろん、ブレイクするような爆発的なこともありえるけれど、それはとても少ないことだし、どんな産業にもある。
だから、映画産業と言いながら、その奥にはどんな人にも夢がある。
例えば撮影部だったら、自分の最高傑作を撮りたいとどこかで思っているはずだ。
例えば録音部だったら、本来、聴こえない感情が聴こえる音声を録音したいと思っているはずだ。
もしかしたら、ハリウッドで美術をやってみたいという人だっているかもしれない。
産業だし、仕事だし、生活が懸かっているけれど、その奥には夢がある。
なかったとしたら、続けられるような世界とは思えない。

おいらは、もちろん、プロの仕事に感動しながら、期待しながら。
同時に、奥に眠っているような夢を大事に大事に、この作品という器に汲んできた。
それがこぼれるようなことがないように、必死に何かを守ってきた。
もちろん、監督の思いも、役者たちの思いも。どれもこぼさないようにしてきたつもりだ。
それは何故かと聞かれたら、それがこの映画だからだ。
おいらの思いなんか、この映画が完成すること、たくさんの人に観てもらう事、だけでいい。
皆の思いをきちんと繋いでいくことだけでいい。
なぜなら、本来のおいらは、エゴの塊の醜い奴だから。そんなのは捨てなくちゃできない。

MAで、壁にぶつかった今。
同時に、でも、その思いの全てを運べる方法に頭を悩ませている。
監督の思い、音楽監督の思い、エディターの思い。
全てが注がれた音声になれば、それがベストだ。
良い音じゃない。思いのある音だ。
それは、絶対に伝わるものだからだ。
完璧じゃなくて良い。あたたかければ良い。

壁にぶつかるとストレスで、右頬がひきつるようになってきた。
やれやれ。なんだ、この顔の筋肉は。
思いっきりつねってやれ。
そして、笑って上を向くんだ。
一筋の光明が、そこにある。
そこにきっと、何かの答えがあるはずだ。

目の前のかすかな光を頼りに。

歌いたいなぁ。ライブハウスで。
今、唄えば、おいらから何が出てくるんだろう?
いつも、それが楽しみだった。
今のおいらから出てくるものは、また、あの時と違うものなんだろうな。

足を動かせ。
前に進め。
頭を働かせろ。
冷静に、ベストを見つけろ。
地味でいい。一歩だ。一歩ずつだ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:16| Comment(0) | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月21日

MAの始まり

朝起きて、眠い目をこすり、慣れたとはいえ重いモバイルスタジオを背負う。
電車を乗り継いで、スタジオに。
音楽監督の吉田トオルさんとおちあって、KORNさんの車に乗り込む。
スタジオに到着して、MAの準備。

俳優が一人、アフレコ出来ていない部分があって到着。
先にそこから始める。
細かいけれど、細かいからこそ、目立ってしまうような部分。
ちょっとずつブレンドして、ちょっとずつ直していく。
それだけでも、時間がかかる。
そうこうしているうちに、監督も到着。
アフレコを終了して、俳優には帰っていただく。

頭のシーンからMA開始。
最初の楽曲をどうするかで、いきなり詰まる。
この方向の方が、僕はいいと思いますと、一応宣言する。
こっちで作って、一度あっちに行ったけど、こっちに戻す方法もあるよね。という流れ。
こっちに戻すには、何が必要で、何が足りないのか、音を聞きながら探る。
監督の一言で、急きょ、レコーディングの開始。
スタジオの外までケーブルを伸ばして、足音の収録。
スタジオのブースに入って、音声の収録。
共に、かすかに聞こえる程度の音でしかないんだけれど、それが空気を作っていく。
すごいなぁと思いつつ、その1シーンで1時間以上の時間を使ってしまう。
残り時間を考えれば、とても、間に合うペースではない。

ある程度、音声は整理してあって、バランスを見ながら、楽曲のフェーディングをしていこうと思っていたのだけれど。
その音声の整理が、もっと必要だなということになった。
そこでもう、今日中にMAが終わることはないと、理解した。
急遽、ブースにもう一台のMACを開いて、Protoolsを使用しての作業。
音声の整理、整音と、楽曲の配置、フェーディングを同時進行で進める方向になる。
音声の整理担当においら。
楽曲の方に、監督と音楽監督。
え?うそ、それ・・・責任重大じゃないの??
・・・と、思いつつ、そこから数時間ヘッドフォンの中で生きることになる。
おいらは、ヘッドフォンをつけると、音に集中しすぎてしまって1時間が耳の限度なのだけど。
そんなことも言ってられなかった。

パラレルで進む作業。
遅々として進まない箇所も、出てくる。
そうこうやっているうちに、整音班はタイムアップ。
MA助手さんを見送り、出来ることはもう、劇伴の整理。
音楽監督の指示で、フレーム単位で配置場所が移動して、最適なバランスになっていく。
クライマックスの頃から合流したから、ぴりぴりと反応してしまう。

ふと思い出したこと。
音楽ともSEとも言えるのをまだ配置していないこと。
あ、これ、どうするんでしたっけ?
あ!やってないじゃん、やろう!と急遽、配置するようなことも。
それが、流れた瞬間に鳥肌。涙。タイムトリップ。
監督も立ち上がって、音を確認したと思えば、次から次に、提案を出す。
だとしたら、こうじゃないか?こうしたほうがいいんじゃないか?
その連続から出来上がったそのシーンは、あっという間に心に落ちていく名シーンになった。
明らかにそれまでのそのシーンとは違った意味を持った。

気付けば終電も間近。
それでも、ここもやっておこう。ここやってないじゃない?の連続。
ギリギリまで追い込んで、ついにタイムアップ。
おいらは通常のルートではすでに電車もなく。
終電から終電を乗り継いで、一度も、ノリ逃すわけにもいかないスリリングな乗り換えで、ようやく帰宅した。
よく寝過ごしたり、どこかで乗り換え間違えずに済んだものだ。
そのぐらい疲労していたし、電車の中で、ぼぉっとしていた。

大いなる前進と、素晴らしい誕生があったと同時に。

MAについてのスケジュールを再考しなくてはいけない、大きな大きな壁にぶつかった。
完パケ納品日は、決定しているわけではないけれど。
最短でこの日には、完成が必要になるかもという日程がある。
最高も最低も想定して動くことが大事なのだとすれば、やはり納品日は動かしたくない。
いや、納品日はどんな仕事にも当然あることなのだ。
仕上げてから納品日が伸びて、じゃあ、もう一度整理しようというなら、それはそれで良いのだから。

音に関してのこだわりが強いこの三人が揃えばこうなることはわかっていたけれど。
さて、どうすることが一番良いのか・・・やや、胃が痛いけれど。
それを最高の結果に繋げる方法がきっとあるはずだと、もう一度、頭をひねるしかない。
MA・・・整音が1からになったと思っても良いぐらいの局面だ。

どんな難局も乗り越えてきたじゃないか。
絶対に、回答はあるはずだ。
まずは、布団に入ろう。
今日はもうアイデアは出ない。
目がしばついて、耳が疲労して、集中力が散漫なのは明らかだ。

MAが始まった。
始まったと考えるのだ。
ここから、どう進むか。
相変わらず、重い体でも、まず一歩、足を出すしかないのだ。

映画は完成しようとしているのだから。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:39| Comment(0) | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月20日

MA前夜

稽古場に行く。
誰もが口にしづらいことをぽつぽつと話し始める。
誰もが口にしづらいことはおいらも口にしづらい。
ただ、しづらいというのは個人的なことだから優先順位が低い。
傷みを感じても、おいらは、口にする。
人間同士である以上、ごまかして通用しない場面が必ず来ると思っているだけだったりする。
大いなる前進だなぁ。大事なことだ。

稽古が終われば移動。
カラコレが終了した映像データを受け取りに。
電車を乗り継いで3度目。
到着すると、食事をしているから少し待っててほしいとの連絡。
公園で座っていると、撮影監督の吉沢さんと、Bカメの山崎さんも。
あれ?今日も吉沢さんがいらっしゃるとまでは思っていなかった。

スタジオに移動して、データの書き出しを待つしばしの間、吉沢さんと話す。
スクリーンでのチェックを監督にしてほしい。
きっと、スクリーンで観ればまだ色々出てくる。
だから、後悔しないようにと、何度も気にかけてくださる。
こんなに大変な作業をして、なお、作品についても、監督についてまで考えてくださっている。
吉沢さんに正直、この映画が公開されたら、お客様はどう思いますかね?なんて聞いてみる。
その言葉にしびれる。
この年になって、まだ先輩に出会えることの幸せ。
そして、もう1目盛りだけ、自信を深めた。

帰宅して、明日のMAの準備。
まずカラコレ後の映像のチェック。
バラバラだったカットごとの色が調整されている。
文字通り、生まれ変わっている。
細かい調整も、ここまで何度も見続けているからすぐに気づいた。
1段…2段…映像のグレードが上がっていることを実感する。
役者たちの頭には、まだ、アフレコの映像が流れているだろう。
ああ、この世の中で、おいらだけが、この映像を確認している。

効果音のデータをAAFに書き出して、それも含めた全データを、外部接続したHDDに移管する。
書き出してもらったPRORESの映像データも、一緒に入れておく。
1TBもあるHDDがあっという間に埋まっていく。
アフレコデータも、元々のビデオカメラ音声も、効果音ライブラリも全てを一つのHDDに移す。
プロテクションボックスに入れて、完了する。

さて、明日はどの経路で行こうか?
通常ルートか、音楽監督と合流するか。
なんとなく、音楽監督とKORNさんと先に合流する方が良い気がしてきた。
少しだけ、アフレコしたい部分も出来そうだし・・・。
色々な意味で、天王山だ。
どこまで出来るだろう?
どこまで追い込めるだろう?

このBLOGを書き終わったら、このPCをモバイルスタジオにまとめる。
カラーコレクションの時も持参したけれど、結局開かなかった。
明日は、どうなるだろう?
スタジオにおいらも張り付くようなら、PCを開くことはないかもしれない。
3人にお任せ状態になるようなら、別作業をすることも出来る。
何時までかかるかな?

さあ、眠ろう。
明日、作品が更にパワーアップするのだ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:37| Comment(0) | 編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする