朝起きると、仮編集版の書き出しが終わっていた。
すぐにクラウドサーバーにアップロード。
昼過ぎにスマフォ経由でアップロードの完了を確認して、プロデューサーに送る。
しばらくして、拝受の連絡が古賀Pより届く。
1~2日のうちに一度確認して置くとのこと。
古賀Pは、編集もしてきた方だから、途中の映画など何度も観ているはずだ。
どんなふうに観るのだろう?
もちろん、一般のお客様とは違う。
見る角度も違えば、シナリオも読んでいる。
そして、編集工程を知っている。
その上で、観るのだから、それは全然違うものなはずだ。
夕方過ぎに加藤Pから連絡がある。
どうやらダウンロードがうまくいかなかったようだ。
夜にギガファイル便で送ることを連絡する。
その連絡の中に、来週、オフライン試写をしませんかとの提案があった。
「試写」という単語に、一瞬、驚く。
ドキリとする。
おいらは、「オフライン試写」という言葉を今まで一度も聞いたことがなかった。
もう試写という単語だけでも、ちょっとした驚きだった。
え?この段階で・・・と、びっくりしたのだ。
しかも、大きいスクリーンで、複数人で確認するのだという。
すぐにオフライン試写とは何か調べに入る。
いわゆる、仮編集試写というやつだ。
これを観て、なるべく多くの目で、仮の段階の編集を確認する試写のようだった。
例えば写ってはいけないマイクが映り込んでいないか。
物語の矛盾がどこかに生まれていないか。
わかりづらい部分がないか。
そういうことを確認するという作業だった。
すぐに、空いている日程を返信しながら。
頭の中で、監督はどうだろう?と思った。
すでに、監督は家で映像のチェックをして、更にカットしたり整理したい部分があるようだ。
出来ることなら、そこまでやってから観てほしいはずだ。
だとすれば、最低2回ぐらい編集に入らなければいけない。
とは言え、オフライン編集というのは、仮編集とわかっての確認。
そこまで詰めなくてもいいという考え方もあるけれど。
どちらが良いのかはおいらにはわからない。
編集工程として効率が良いのは、先に観た方がいいのかもしれないけれど。
監督のアーティスト的な部分でいえば、まだ見せたくないというのが本音じゃないかと思った。
帰宅して、加藤Pに送るデータのアップロード。
数ギガという単位になるのは、ただでさえデータ量の多い映像の、しかも長編が持つ宿命だ。
2時間弱かけてアップロードしてから、転送する。
転送後、やはり、監督から、もう少し編集したい旨の連絡が入った。
どっちが勝つかなと思ったけれど、頭の中ですでに変更したい部分があるならそれが優先なのだろう。
最悪、ぎりぎりまで編集して、オフライン試写に臨もうと思っていたけれど。
そういうことなら、納得するまでもう一度編集に入った方が良い。
ただ言えるのは。
近日中にどうやら、誰よりも早くスクリーンでの試写をおいらが目にするという事実だ。
これには、今も、まだよく実感がわかない。
もちろん、映画館のような大きさでもなければ、音響設備でもない。
それでも、スクリーンで観るというのは、大きなことだ。
大きな画面で観たら、どんな気分になるだろう。
そして、監督とおいらでやってきた編集作品を、実際の映画にする前段階の。
プロモーションに向かった形の言葉がそこで出てくるだろう。
それは、大きな大きな一歩になることだろう。
舞台があるから、次の編集は2月に入ってからになる。
映画祭出展なら、DCPにする前の翻訳なども含めて、逆算してスケジュールを組むはずだ。
そういうスケジュールが出て、この日までに編集!と決めてしまえれば、また変わるのかもしれない。
だからと言って、妥協なんかできない。
一年かけて編集したって、実は良いのだ。
納得するまでとことんまでいじるのも、それはそれだ。
ただ予感はある。
もう、編集工程としては、次のステップに進む直前だという予感だ。
急に試写という言葉を観て、現実感が出てきた。
そして、二人のプロデューサーが映像を確認するのだなぁと、改めて思った。
映画はこうして出来上がっていくんだなぁ。
撮影して編集して公開なんてザックリとはわかっていても。
創作というクリエイティブな現場で、どんな往復書簡が飛び交っているか迄はわからない。
きっとさ。
映画が好きで、映画の仕事をしている人はいっぱいいる。
でも、そういう人ほど、映画を、一観客として楽しむことが難しいだろうなぁって思うよ。
だって、こうやって、様々な工程を知っているのだから。
その時点で、一観客とは違った視点を既に持っちゃっている。
送った映像をどんなふうに観るのだろうか、想像してみたけど、途中であきらめた。
今まで何度も何度も、仮編集試写、ラッシュ、試写会、公開を繰り返してきた方々なのだから。
おいらの想像力ごときでおっつくわけがないさ。
監督の頭の中に再構築されたものを。
おいらはエディターとして完全に再現できる準備をするだけだ。