帰宅して、一息ついてから、音楽監督から来た修正データを反映する。
昨日まで仮で作り直したタイトルをまずレンダリングする。
これで、通して観れる体制になった。
頭から、メモ帳を開いて観ていく。
連続してみようと思っていたけれど、時々止めて、メモだけ残す。
片手にはシナリオ。
でも、このシナリオも、もう編集で随分変更点があるか・・・。
昨日は、音が乗った前後で観ていったけれど。
音が付いていない部分も通して観ていくと、また違った世界が広がっていく。
感動は、前振りがあるからより深くなるし、笑いは連続の笑いになっていく。
とにかく、音が張り付けられた映像を監督が確認できるのは来週以降。
日曜日に書き出してデータを渡すとしても、それまでに、出来るだけのことをしたい。
でも、おいらなんかが出来ることなんか、限られている。
トオルさんの楽曲製作の手伝いなんかできない。
出来ることは、観ることだ。それだけだ。
涙でにじんだ軽い躁状態のまま、さっきのメモを開きながらメールを開く。
メモしたことだけじゃなくて、雑感を一つ一つ書いていく。
ハッキリ言って、おこがましいんじゃないかって気が引ける自分を抑え込みながらだ。
ただ、今、出来ることは、おいらの角度から気づいたこと、思ったことを、伝えるしかないと思った。
とは言え、基本的に、すごいとか、感動とかしている状態なのだから、大したことも書けない。
この曲は、僕はこうだから切ないです。なんて、感想みたいになってしまう。
でも、それでも良いと思った。
ここから、更に音をクリエイトしていくための、情報になるなら、それでよい。
そして、もちろん、おいらの雑感なんか気にする必要すらないのだ。
ただ、雑感を目にしているうちに何かが下りてきたり、ひらめいたりすることがあるのを知っている。
舞台でもある。
トオルさんと、リハーサル後に酒を飲んでいて、音楽の話をしている。
あそこの、あれが好きです。
あそこに、あの曲すごいです。
そんな話をしているうちに何かを思いついて、次の日に新曲を持ってくる。
そんなことが今まで何度も何度もあった。
おいらの口にしたことなんか情報でしかない。
でも、その情報がきっかけで、何かが生まれるなら、それが一番良い。
舞台では、演出家やオペレーターからは直接、曲を足してほしいという依頼があったりする。
今回も監督からは、多少はあるかもしれない。
それとは、まったく違った形で、おいらは、ただただ、思ったことを伝える。
ヒントにすらならないキッカケで、充分じゃないか。
それぐらいしかできないんだから。
何といっても、今、この音楽を聞けるのは、音楽監督とおいらの二人だけだ。
監督に見せる前のデータ。
そこで、ほんの一歩だけ、進んでみた。
昨日、シーンごとに観て、寝る前に決めた。
ちゃんと、通して観て、自分の思ったことだけは伝えようと。
感想はあとからあとから出てきた。
書ききれなかったと言ってもいい。
編集でここを監督が気にしていました!なんて小さな情報まで含めればもっと書ける。
でも、さすがに、長文になりすぎると思って、ある段階でキーボードを打つのを辞めた。
簡単な感想じゃ失礼だという思いもあったけど、思ったことを書いていたら、簡単になんてならなかった。
この時間だから、もう寝ていると思ったら返信が来た。
思わず、気にしないでください、と返信してしまったけれど。
大丈夫と、すぐに返信。
少し胸をなでおろす。
トオルさんは、バンドマンでもある。
バンドマンは、忌憚ない意見を交わすことを、善とするのだ。
おいらのつたない文章は、忌憚もあるし、感想でしかないけれど。
落ち着いて考えたらいつもと変わらないのかなぁ。
舞台の時も、いつも、どこかでトオルさんと話をする。
わかってないなぁなんて、思われちゃっても構わずに。
いつも気が引けるんだけど、いつもその時間が来る。
うまく、そういう時間に誘導されているのかもしれないし、そういう空気がどこかでいつも生まれるのかもしれない。
劇団の仲間には、よくお前、色々言うよなって言われたこともある。
いいっす以外、おれ、言えねぇよなんて。
多分、ただのキャラクターの違いなだけだ。
明日。
検証してくれるって書いてあった。
なんだか、申し訳ないなぁという思いと。
メールの最後にあった、一言と。
二つが頭の中で交錯する。
大好きになった、今回初めてのあのメロディーが頭の中に流れる。
モノを作る
それは、人と交流することソノモノだ。