音の貼り付けも25分ぐらいまで進んだ。
順調と言えば順調。
このまま進めば、なんとか、後半の編集には追いつくはずだけれど・・・。
とは言え、通常の映画に比較すれば異常ともいえるほどの台詞量。
なかなか簡単じゃない。
音声はパラレルで映像に同期させるように張り付ける。
最終的には、MAで全体のバランスを調整して、整音していく。
無駄なノイズなどは全て削り取っていく。
可能な限り、セリフだけで抜き出せるなら、抜き出しておく。
定位は、どんな音場で調整するのだろう。
5.1チャンネルなら、360度の音場になる。
映画館で後方から音が聴こえたりするのは、7.1チャンネルだったり、サラウンド、Dolbyなどを駆使しているからだ。
映画ってすごいと思うのは、映画の臨場感を高めるためにあらゆる発明がされてきたこと。
2チャンネルのステレオ以上に、音の位置が広い。
そういえば、まだMAの出力をどこまでやるのか聞いていないけれど・・・。
トオルさんの音楽が、3D音響になったら、おいらは眩暈がしてしまうだろうなぁ。
ダンサーインザダークという映画で、映像がざらついていたのに、音場の豊かさにびっくりした覚えがある。
ある意味でミュージカルといい、ビョークが主演なのだから、音には相当こだわったのだと思う。
映像はあえて、フィルム感を強調して、音はかなり整音したのだと思う。
或いは、音楽畑のスタッフが入っていたような気もする。
ビョーク自身の可能性もある。
その後のサントラなどの展開もあったわけだから・・・。
監督と会える日には、監督としか出来ない繋ぎをどんどん決定していく。
監督と会えない日は、その準備と、終わった編集の整理をする。
その隙間隙間で、音の貼り付けや、タイトル作りや、とにかく、編集以外の部分をやっていく。
同時進行でどんどんシーケンスを完成形まで仕上げていくのだ。
しかし、2時間以上のシーケンスを組み立てていくのだから、その情報量はとてつもない。
そう考えると、帯のドラマ・・・朝ドラや昼ドラマの凄みを感じる。
毎日、編集して完パケを出しているのだから。
映画とドラマの違いというのは、色々に言われている。
畑が違うから、実はスタッフさんの動きなんかも違う。
だから、明確に技術的な違いも多いようだ。
或いは、予算の編成が全く違ったりもする。
でも、基本的に、物語を映像で見せるのだから、同じものだとも思える。
おいらは、そういう様々な違いは、むしろどこかに置いておいて。
単純に視聴者が違うのだと思っている。
ドラマはテレビをつければただで見ることが出来る。
家で見るのだから、別の何かをしながらだって、横になりながらだって見れる。
つまり、集中せずに観ることが出来るメディアだ。
だから、自然、夢中になれるような仕掛けをしていく。
予告や、その回ごとの終わり方も重要になってくるし、CM前後なども重要になってくる。
それに対して、映画は違う。
チケットを購入して時間を作って足を運ぶお客様がそこに入る。
照明を落として、映画専用のサラウンドで、とにかく作品に集中してもらう環境が整っている。
チャンネルを変えることは出来ないし、CMの間に気をひくような演出もない。
一見、意味不明なシーンや、ゆったりと時間を流すことも映画ならできるということだ。
視聴者が違うというのは、すなわり、作品の構造そのものまで変えてしまうということ。
今や、ドラマでもバラエティでも、テレビの世界では、1分に一回は、何かを起こさないといけないらしい。
それが笑いであれ、驚きであれ、泣きであれ、とにかく、なんらかのアクションを起こさないといけない。
優秀なお笑い芸人はそれを理解していて、ネタでもそのテンポを体に入れている。
今や、視聴率も、秒ごとに出てしまうのだから、そこまで徹底しないといけないわけだ。
結果、ずっと面白いけれど、内容が薄いなんて意見もよく目にする。
でも、あれは、内容が薄いのではなくて、どれだけ長い時間見てもらうかの勝負をしているのだ。
そもそも、そこで勝負しているのだから、意見になっていないと思う。
そう考えれば、いかにテレビマンたちが優秀なのか。すぐに理解できる。
逆に映画だと、そもそも長い時間見てもらえることが約束されているようなものなのだ。
だとすれば、どこで勝負するんだ?という話になった時に、様々なテーマが生まれるのだろう。
この「セブンガールズ」も、なぜ、映画なんだよ?という大きな問題がそこにある。
別に舞台のままでいいじゃないかという意見だ。
単純にもっと広い世界に行きたいからだという意味もあるし、この作品を世界に持っていきたいという目標もある。
けれどそれとは別に、この映画で、なぜ映画にしたのかという、作品的な意図は絶対的に必要だ。
そして、それを最初の打ち合わせで話して、それ以来ずっと考えている。
映画でしか表現できないセブンガールズ。
つまり、それはなんなのか。
そこがぶれてはいけない。
それがなければ、とてもじゃないけれど、世界になんか通用するわけがないのだ。
音を貼り付けながら。
映画特有のあの映画館の空気を想像して。
おいらは、もう一度、そのテーマを思い出していた。
大丈夫、ぶれていない。
この音たちが、この映像が、映画館で、セブンガールズの世界に観客をいざなうはずだ。