朝一で集合して、街中での撮影をする。
ここといくつかのシーンの撮影で、全ての撮影は終わる。
撮り直しも流石に、現時点で思い当たる場所はない。
7時から12時までの予定。
おいらは、その最後のシーンだった。
最後のセリフを言った時。
なんだかわからないけれど、シビれた。
最後のセリフは、なんというか、本当に最後だなっていうセリフだった。
撮影に臨んだ俳優の何人かでラーメン屋に行く。
おいら以外は、祝杯。
他の俳優と違って一か月遅れでのクランクアップを祝った。
おいらは、酒を控える。
そのままいつもの稽古場に移動して、早めに鍵を開けてもらう。
昼をとった監督もいたから、稽古が始まるまでのわずかな間も編集をした。
2時間と少しだろうか?
それでも、数シーンの編集が済んだ。
それだけでも、違う。
今週は、何日編集に入れるだろうか。
ついに撮影も終わったから、出来るはずだ。
とにかく、頑張るしかないな。
酒を控えたのは、編集があるから。
1コマのずれをなくし、1mmのマウス操作にミスがないようにだ。
確実に編集にかかる効率は高まっていて、指示通りになるのが早い。
稽古が始まって、いくつか芝居もする。
さっき、クランクアップしたのに。
体は、芝居をしたがっているのがわかる。
もっともっと、自分が乗るような奴がやりたくなっている。
稽古が終わり、十数人でクランクアップを祝う。
そこでようやく祝杯。
もうおいらはこの映画の芝居を演じる機会はない。
アフレコも芝居なんだろうけれど。
そういうことじゃないもんね。
舞台でも演じた後は、もうおいらのものではない。
舞台に来てくださったお客様の頭の中のものになる。
映像も同じだ。
演じ終わったら、もうおいらのものではない。
監督の素材であり、物語の一部であり、登場人物であり、観てくださるお客様のモノになる。
ああ。
おいらの手を離れちゃったか。
一抹の寂しさと共に。
まだまだ関われることがあることに感謝を覚える。
この物語を仕上げていく作業が待っているからだ。