劇団では公演後の翌週に必ず反省会をする。
あのロケ地を離れて、初めてみんなと顔を合わせる日。
反省会をやろうということになった。
もちろん、反省もしたけれど。
口から出てくるのは、あの撮影中に起きた数々のこと。
思い出というにはまだまだ記憶に新しすぎるし、生々しいというには時間が空いている。
笑いながら、反省点を少しずつ見つけ出していく。
ただ、笑い話をしているように見えるけれど。
中には、当然、自分の反省の実を受け取る者もいる。
ただ笑っていても、自分の成長にはつながらないから。
でも、実際は違うかもしれない。
あのロケ地を離れて、日常がやってきて。
それから、初めて、皆と会った日。
共有した時間を過ごした仲間と、もう一度顔を合わせること。
それだけで、あとの会話なんて、実はたいした意味もないのかもしれない。
苛酷だったとはいえ、楽しかった日々はすでに過去のものになっていること。
それをもう一度認識するような、こそばゆい時間だった。
けれど、いつもの公演後の反省会とは違うのだ。
作品はこれから完成に向かう。
役者は仕事をやり終えて、安心の時の中に入っても。
ここからが、本当の勝負の始まりだ。
おいらたちのやってきた18年間がついに、世界と対峙する時がやってくる。
認められないかもしれない。
けなされるかもしれない。
でも、逆もある。
社会にさらされるのはそういうことで、そういう勝負をこれからしていくのだ。
胸を張って、やったことを誇ればいい。
誰に何を言われても、胸を張れるだけのことをやってきたよ。きっと。
来年の初頭にも、平日でもいいから舞台に立とうという話をする。
映画に集中していたから今年は秋の公演がなかった。
せっかく応援していただいたのに、会えなくなるなんて理不尽だ。
おいらたちは、あのたくさんの人たちに会わなくてはいけない。
いつものように、板の上に立たなくてはいけない。
そして、ここにおいらたちがいるということを、もう一度、示さなければいけない。
下北沢から世界へ。
ホームグラウンドを離れるわけにはいかないんだ。
未来が待っている。
その未来は、相変わらず下北沢の舞台の上で、芝居を続けているおいらたちだ。
そして、そんなおいらたちのまま、世界に向かって勝負だってできる。
これは、幸せなことだと思うよ。
だって、未来があるんだから。
本当は、皆に会って、今日は、ありがとうと言うつもりだった。
大変な企画を立ててしまって、皆を巻き込んだ張本人だ。
楽しんでくれたからとかそういう問題じゃなく。
単純にありがとうと思ったからだ。
でも、皆の顔を見たら、なんにも言葉なんか出なくなったよ。
ありがとうね。
相手役の顔なんか、恥ずかしくて、見れやしないおいら。
立ち止まるな。
また一歩足を出せ。
その先に見える道は、どこにだって繋がっている。
未踏の道を、おいらたちは切り開いたのだ。
誰もやったことがないことをおいらたちはやったのだ。
胸を張れ。
強く。
胸を張れ。
高く高く、足を上げろ。