父の七回忌に向かう。
数年ぶりに会った姪っ子も甥っ子も、想像以上に大きくなっていた。
子供の成長は早い。
時間とは、個人の観念のモノだという。
毎日顔を合わせている仲間の変化には気付きづらい。
嫌なことをやっていれば、最後の1分は永遠のように感じる。
楽しいことに夢中になっていれば、あっという間に時間は過ぎていく。
脳の認識で時間の長さは変わる。
世界は、常に脳が認識していることがハッキリとわかる。
父が亡くなって六年という歳月もちょっと、自分の中では理解できない。
きっと、夢中になっていた年月は、どんなことだって、あっという間に感じさせる。
先週の金曜日は、撮影の最終日で、一番遅くまで撮影した日だった。
おいらは、照明さんのバラシが終わるまで待ったから、帰りがとても遅かった。
それがまさか、つい先週の話だなんてちょっと信じられない。
法事を終えて、某企業に足を運ぶ。
いつものように、笑顔で対応してくださるご担当者様。
お借りしたロケ地の鍵一式をお手元に返却した。
いつになるかわからないけれど、2~3年のうちにあのロケ地がなくなるかもしれないという。
20年以上眠り続けてきたあの敷地は、いよいよもって、更地になろうとしている。
おいらたちは、そこに空気を入れて、美術セットを組んだ。
何年も放置されていたあの場所を最後に映像に収めてもらえることは嬉しいことでした。
そんな言葉をご担当者様に頂いた。
もったいなさすぎるほどの言葉だ。
おいらは朝陽館の若主人の言葉を思い出していた。
廃業する歴史ある旅館の家具や建具をいただいた時に言われた言葉。
この旅館は僕の人生そのものです。ここで生まれて、ここで育ってきました。
どうせ捨ててしまうこの家具を、使ってくれるのは、とても嬉しいことなんですよ。
そんな言葉だ。
まるっきり、同じような言葉を、おいらは別の方から頂いたことになる。
愛情にあふれている。
愛着のある土地に、愛着のある家具でセットを建てたのだ。
そして、おいらは、今、あのロケ地に愛着を持っている。
あそこが更地になるかもしれないという話は、とても寂しいなぁと感じていたのだから。
時間の観念は、脳の認識で大きく変わっていく。
100年続いた旅館の家具と、20年以上眠っていたロケ地と、18年間培ってきた劇団という団体。
その全てが70年前を描いた2時間超の映画になっていく。
結果的に、その映画を観てくださるお客様にとって、それがどんな時間になるんだろう?
映画に封じ込めるのは、脳が認識している世界だ。
鍵の返却が終わった後、久々に新宿の紀伊国屋に行った。
編集の勉強を少しでもしたかった。
amazonじゃ出来ないことだ。
ソフトウェアの使用方法よりも先に、全体の流れ、基本的なことを知りたかった。
おいらは時間を忘れて、本を探して、読んでいた。
これから始まる編集作業から公開までの流れを。
おいらは、後になってどんな時間と感じるだろう?
おいらもいつかは、親父のように目をつぶる日が来る。
その時に、自分の生きた人生をどう感じるかな?
あっという間だった。
そんな風に感じられたらなぁって、つくづく思うよ。
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