11月4日になった。
親父の七回忌。
ロケ地がみつかっていなかったら、行けないことも覚悟していたけれど。
なんとかかんとか行けそうだ。
・・・とは言え、それが終わればロケ地をお借りした企業様に鍵を返しに行くことになっている。
時間がかかるようなら早めに辞するつもりだ。
お世話になったあのロケ地の提供は本当に本当に大きなことだった。
ご担当者様の優しい言葉のメールが、今も胸に残る。
ご迷惑もおかけしたから、お礼をしなくてはいけない。
数十年も眠っていた土地が、映画として記録に残る。
あの素晴らしいロケーションは、もう一度、深く眠ることになるだろう。
このBLOGを書き始めて、一年経過して鍵を返す。
本当に折り返し地点のようで偶然にしては出来すぎな気もする。
でも、これはきっと、そういう偶然が重なってできていく物語なんだ。
現実だけれど、同時にサクセスストーリーでもある。
撮影はまだ少しだけ残っている。
とは言え、早ければ午前中に終わってしまうようなボリュームだ。
一か所だけ、ナイト撮影があるけれど、そのシーンをどうするかで決まるだろう。
あのロケ地では撮影できない、或いは、あのロケ地じゃなくても良いシーンなだけだ。
撮影は終わっていないけれど、編集はもう開始できる。
100シーン以上撮影が出来ているのだから、先行して始めることが出来る。
おいらの手元に来るのがいつになるかはまだ未定だけれど、前倒しして勉強を始めている。
編集と一口に言っても、いくつかの段階がある。
撮影部のハードディスク、録音部のデータを取り込んで、並べていく。
基本的な設定などまでは、やっていただく。
最終的な納品形態にする時に、なるべくコンバートをしないでいいようにだ。
それから並べ替えた映像をこれでもかと追い込んでいく。
ここにカットチェンジを入れるとか、シーンとシーンの繋ぎを変えていくとか。
映画の流れを作っていく編集だ。
それが終われば、今度は色味の調整がある。
同じシーンなのに、別のカメラで別の角度で撮影すれば、色味が微妙に変わったりする。
繋いだ時に、違和感を感じないように全体的な色味を均一にしていく作業だ。
それから、MAと呼ばれる整音が待っている。
オーディオデータを、トラックに並べて、実際の映画館で耐えられるようなものに変えていく。
海外の映画が吹き替え可能なのは、セリフはセリフのトラックに入っているからだ。
効果音や音楽とは別に、セリフのトラックがあるからこそ、吹替が可能なのだ。
それで、納品形態にして、納品。
納品後に、字幕などを含めた映画上映できる形式に変換する作業も待っている。
もしDVDになるのであれば、ここからさらにオーサリングという編集作業も残っている。
おいらが担う作業はその中でももっとも時間がかかる、並べ替えていく作業だ。
おいらがやることのメリットはたくさんある。
もちろん、予算的なメリットもあるけれど、それ以外にもきっとあると思っている。
作品をよく知っているし、監督の意向も理解している。
そして何よりも、監督と二人での作業の時に、監督は、おいらには、好きなように言えるだろう。
馬鹿だの、センスがないだの、ボロクソにこき下ろしたところで、おいらが気にしないのをよく知っている。
監督が思うだけ、やりたいだけ、編集を追い込むのであればそのほうがいい。
そのあとの、色味調整以降は、やはり編集のプロと機材にお願いすることになるだろう。
ただ一つ、問題が残っている。
通常、日本における映像編集は、MacのFinal Cutで行うのが普通とされていた。
最近では、AdobeのPremiere PROを使う人が増えてきたというけれど・・・。
それから最終的な色味の調整など、大きな作業は、Avidというソフトウェアで、やはりMacで仕上げる。
音楽のレコーディングはいまだに、Protoolsがメインだけれど、そのProtoolsを出しているのがAvid社だ。
プロユースの編集、レコーディングソフトウェアを開発している世界的な会社だ。
今回、取り込んで並べ替えるまでのところを、やっていただき、Avidでの調整が出来るように納品することになる。
どちらもMacで、スタートがFinal cutだ。
おいらが編集をやる場合、WindowsのPremiere PROになる。
MacとMacの間に、Winが入ることになるのだ。
ハードディスクのフォーマットから、データ形式、元データを読み込めるかどうかまで。
調べながらやらないと大変なことになりかねない。
最終的にシーケンスデータは渡せずに書き出した完パケを渡す形になることだってあり得る。
Win特有の映像データで保存したら最後、Macで開くことは出来ないのだ。
唯一の救いと言えば、現在、映像の現場では、どんどんPremiereが主流になりつつあるという情報だ。
Adobe社の他のPhotoshop、Afterefectsなどのソフトウェアとの連携や、使いやすさ、4Kの対応、読み込めるデータの豊富さ。
それが、一気にプロユースの中でのシェアを拡大しているという。
最近でいえば、シンゴジラの編集もPremiereだったと記事にあった。
音楽PVなんかは、エフェクトの多用があり、どんどんAdobeになっているらしい。
だから、ネット上で検索しても、本屋に立ち寄っても情報は山のようにある。
おいらもPhotoshopは使っているし、Premiereでいくつか短い編集は経験済みだ。
それに、Adobeは、チュートリアルが非常に丁寧で、今日も一日チュートリアルビデオをネット上で見ていた。
わからなくなっても、すぐに調べられるというのは大きなアドバンテージになる。
おいらが目指していたのは映画を作ることではない。
映画を作って、それを世界まで持っていくことだ。
ただ映画を作って、楽しかったねで終わらせる気なんかない。
そのためには、宣伝であったり、チラシ、ポスター、試写会会場探し、上映館探しと、山のように作業が残っている。
けれど、その全てを円滑にするためには、この編集で、追い込めるところまで追い込むことが先決だと思っている。
すごい作品をまず仕上げておけば、宣伝の効率がぐっと良くなるのは当たり前だからだ。
世界中の人に届けるにはどうしたらいいだろう?なんて考えるのであれば。
この最高の素材を、どれだけ編集で、更に良いものに仕上げていくか悩んだほうがいい。
先々週は大工だった。
先週は俳優だった。
今週からはエディターだ。
エディターが終われば、今度は制作だ。
なんだってやるさ。
学べ。
学ぶんだ。
たぶん、役者にしかわからない編集っていうのがあるはずだ。
それがきっと大きなアドバンテージになるだろう。
まぁ、その前に。
明日、親父の墓に、報告だけでもしておかないとか。