2016年10月27日

撮影三日目

前日の雨で自転車を置いて行ったから、初めて電車とバスで向かう。
当たり前だけど体力的には断然こちらのほうが楽なのだと知る。
とは言え、自転車があれば、最後の交通手段に迷うこともない。
可能な限り、自転車で移動になるだろう。

撮影三日目ともなれば、すでに移動から撮影まで、慣れが入ってくる。
当然、慣れには良い部分も悪い部分もある。
舞台をいつもやっているから、そこの部分はすでに考えてあった。
舞台は、やはり慣れていく。
初日は緊張して、二日目に弛緩することを、二落ちと言ったりする。
張り詰めた何かがいつの間にかなくなってしまうのだ。
けれど、お客様にとっては、基本的には常に一回目の観劇だ。
クオリティが著しく下がるようでは、申し訳が立たない。
ただ、良い面もある。
舞台の構造を理解し、セットの構造を理解し、段取りを理解していくことだ。
初日に迷って、わからなくなったことまで、全て、体に落ちてくる。
どこにいれば、本番に映り込まないとか、次のシーンの準備だとか、一段、クオリティが上がる。

おいらは、2シーン先まで考えて行動している。
その上で、スケジュールの変更もありえると想定していた。
だから、小道具の配置など、事前にチェックだけしておいた。
狙いやアングルも、少しずつ見えてきて、あ、ここは動かすな・・・というのを直感できるようになってきた。
自分の出番の前にはセット裏に待機して、前のシーンが終わると同時に板付きする。
とにかく、一歩先を読むことで、間をあけない。
そういう細かい努力がないと、この短い期間での撮影は厳しい。

疲れがピークに達するであろう、本日の夕食。
劇団前方公演墳より、ケータリングの差し入れを入れた。
先週から予約しておいた「もうやんカレー」だ。
なんと、もうやんカレーが、出張してきて店を開いてくださる。
それも、カレー2種類、タンドリーチキン、サラダ、お米はキヌア五分づき、牛筋、じゃがいもなどなど。
ランチの食べ放題メニューがそのまま現場に出現する。
クラウドファンディングに書いたように、基本的に劇団員は手弁当で撮影に挑んでいる。
そのままでは、いつまでもスタッフさんと食事を共にする機会がない。
だから、1度だけでも、差し入れを入れる。
もちろん、映画の予算ではなく、劇団員で集めたお金でだ。

もうやんカレーは劇団にとっては思い出の深い場所だ。
最初の稽古場のそばに、まだそこまで有名じゃないもうやんカレーはあった。
だから、劇団員の数名は何度も通っている。
釣りが好きな連中の最後のしめは決まってもうやんカレーだった。
歴史があり、思い出があり、温かいケータリング。
あとは、皆が喜んでくれるだろうか?という心配だけだったけれど。
思いのほか、皆様に楽しんでいただけた。
スタッフさんもだし、出演者もあたたかい食べ物に飛びついた。
出演者からの差し入れなのに、出演者のほうが喜んでいるようでさえあった。
製作スタッフさんは、つねに映像の現場にいるような方なのに。
もうやんカレーの出張なんてまったく知らなかったという。
これは、すごいです。たぶん、僕、どっかで使わせてもらいます!と言われる。
あまり、もうやんのケータリングはまだ知られていないのかもしれない。
きちんと、探して、みつけて良かったなぁと思う。
現場の空気が、良くなったり、テンションが上がるのであれば、感無量だ。

食べ終わってから、撮影再開。
布団で寝ているシーンは、女優たちが実に楽しそうだった。
このシーンならずっと撮影を続けられるなんて言っている。
劇団員の女優陣で温泉でもいったら、あんな感じなのだろうか?
もちろん、そんな機会は今までに一度もない。
18年間、一度もない。

そして、本日の最後の撮影もやはりおいらだった。
三日連続で、最後の撮影。
現場から、必要のない役者が順番に帰って行って、最後は3人だけ残る。
いつものように、にぎやかな空間がスタッフさんの声だけになっていた。
逆に言えばじっくりと撮影できる。

ナレーションをオンリーで録音した。
監督のすぐ隣で。
監督は、何度も音楽のレコーディング現場でディレクションもしている。
目を閉じて集中して、おいらのナレーションをチェックした。
的確な指示が入る。
それにすぐに答える。
更に入る。
また、すぐに修正する。
声だけの収録だから、誰もが黙って静かな空間に、おいらの声だけが響く。
指示があって、その場で変更できるかどうか、まるで試されているようだけれど。
別に試されているとも感じずに、監督を信じて、自分なりに一発回答を出したつもり。
久々のデビッド・宮原との録音作業に、しばし、感触を思い出す。

ロケ地を出た時間はすでに22時。
前日に置いて行った自転車にまたがり、ひきつるふくらはぎをかばいながら長い坂を下りていく。

ここで撮影できる時間はもう限られている。
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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 05:40| Comment(0) | 撮影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする