2016年10月22日

美術設営最終日

ほぼ美術は上がっている。
周囲を回って、ここ気になるなぁというところをひとつづつ潰す。
既に拘りの世界に入っている。

これでもかと潰していって、ある程度、片付いた瞬間。
もちろん、許可を仰いでから。
おいらは、大きな声で叫んだ。

「男、役者モード解禁で!」

これまで付けていた軍手を脱ぎ捨て、作業着を脱ぎ捨てて。
おいらたちは、一気にセットに立つ。
頭から出来るシーンやるぞ!という声と共に、芝居をどんどんやる。
稽古場とは違う空間。無対象だったはずの扉や襖。
想定していた場所に想定していた物がないこと。
やってみて、わかることが山ほど出てくる。
でも、明日からはそうはいかない。
やってみて、わかることというレベルではなく。
やりながら、対応できることが、役者だ。
当然、やれるべきだし、それがプロの現場だ。

地震の影響で、遅れて美術のチーフが到着。
皆が稽古をしている中、おいらは抜ける。
セットを一つ一つ確認してもらう。
幸い、図面通り、イメージ通りの美術で、直しも少なかった。
いいんじゃないですか?と笑顔で言うけれど。
その笑顔が怖い怖い。
美術を見回ってチェックが終わったころ。
役者はほとんどいなくなっていた。

昨日残った三人で、芝居の稽古。
セットの中での贅沢な稽古と確認。
その空間に本当なら1~2泊するぐらいのほうが生活臭もでる。
二人が帰ると、真っ暗なパンパン小屋に一人。
幽霊が怖いなんて人には耐えられないような空間だろうけれど、幸い、おいらは一切気にならない。
今、まさに、この立派すぎる映画セットを占有している。

台本を端から、演じていく。
演じている途中に連絡の電話が入り、全員にメールを送る。
メールを送ってから、再度、また台本に集中する。
ちょっとセットをいじったりもする。
おいらは、この時代のここに居候していると、自分の無意識に刷り込んでいく。

翌日翌々日の二日間は稽古日と予定していた。
それは、演出の再確認を現場でやりたいと思っていたからだ。
なぜなら、おいらたちは舞台をやってきたからだ。
舞台人は、意地でもリハーサルをやる。
それは、場当たりであったり、ゲネプロであったりだ。
舞台に実際に立っての稽古時間をきちんと設けるのだ。
監督は打ち合わせで来れない可能性があるけれど、それでも稽古は必要だと思っていた。
それが、まず、監督が来ることになった。
まだ足りていない演出をしたいと言っていた。
それが、今日になって、助監督も、撮影監督も来ることになった。
つまり、これは、カメリハのリハのような稽古になるということだ。
もう、自分たちで確認のための稽古をする時間は残っていないと確定した。
明日は、すでに、撮影本番同様の稽古をしなくてはいけないということだ。

覚悟しなければいけない。

なぜなら。
おいらたちは、まずスタッフさんに芝居を観てもらうからだ。
その芝居を観て、アングルを決めたり、カット割りを変えたりもある。
このリハーサルで、実際の映像のほとんどが決まっていく。
そして、この芝居をもっとよくみせたい!と思ってもらえることが出来たのなら。
それは、現場の空気になっていくのだから。
おいらたちはやらなくてはいけない。

この2日の稽古が終われば、もう本番しかない。
舞台と違って、チャンスは1度しかない。
だとすれば、明日、明後日は、舞台本番の3日目ぐらいの出来じゃないとだめだ。
もう、この芝居は何も言われなくてもわかる。
そういう自信をもって挑まなくてはいけない。

野郎ども。
役者解禁だ。
今日稽古した役者たちはそのイメージを掴めただろうか?

待ったなしだ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 00:00| Comment(0) | 撮影準備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月21日

美術設営4日目

ほぼ美術が組みあがっているから、ご褒美でいつもより遅い入り時間。
とは言え、朝、まだ誰も来る前からロケ地に行く。
同じぐらいについたメンバーに窓を開けるのをお願いする。

ほぼ先が見えた段階で、裏導線の片付けに入る。
そして、早い段階でここまで来れた分、こだわりの部分に入っていく。
見切れを隠し、外観にもこだわり、小道具を配置して、汚しも入れていく。
低予算だけど、うん千万円の美術を組むんだ!と言っていたけれど。
美術スタッフさんも、これは、数千万の映画のセットですよ・・・と言ってくださる。
女優陣には、もう手を出さないでいいよ。練習していいよと伝える。
男性陣も、もうそこまでの力仕事は残っていない。

汚しまで入れた美術セットに実は感動している。
でも、ここからさらにこだわりが入るし、翌日は、美術の確認も入る。
そこで、また家具や道具の置き場が変わっていくだろう。
直しも入るかもしれない。
そこまで行って、はれて、この映画のセットが完成するのだ。

女優陣が音楽を鳴らして、踊り始めた。
稽古場の平らなフロアリングの上で練習してきたダンス。
それが、パンパン小屋の前で、客に向かって踊るダンスになる。
地面には勾配があって、決して踊りやすい環境ではない。
当然、稽古場のように広くスペースを使うこともできない。
カメラアングルが決まれば、勝手に踊る範囲を変えることもできない。
足元が安定していない分、踊りが小さくなっているのがわかる。
今日、ダンスを出来た女優陣は良いけれど・・・きっと苦労するだろう。
二日間のリハーサル予定日は監督が来て演出もする。
自主稽古のつもりだったけれど、監督が来てくれるなら、当然、そちらが優先だ。
踊る時間が必ずあるとは言い切れない。
今、ダンスしておくことは大きな大きなアドバンテージになるだろう。
本番までダンスの練習時間があるかどうかなんか今の時点ではわからない。
役者たちは、そして、芝居に集中していきたくなるだろうし。

作業はほぼ終了している。
もうやることもないから、ばれていいよと一言。
それぞれ家路につく。
一人、ロケ地に残って、立ち上がったパンパン小屋に向かう。
シナリオを開いて、まず自分のシーンを読み込む。
時間が出来たら必ずやろうと思っていたこと。
ロケ地の、あの部屋でシナリオを読み込むという作業。
その場の空気、その場の持つ力、その場の距離感。
それをたっぷりと感じながら、夜、一人での稽古。
最高に贅沢な時間。
劇場でも、人より早く劇場入りして、そういう時間を必ず作ってきた。

ふと、足音が聞こえる。
女優が二人、戻ってきた。
やっぱり、稽古しようかと思って・・・と。
一人の贅沢な時間だけど、別に邪魔でも何でもない。
相手役と確認することだってある。
三人で、シナリオを片手に、芝居の確認をしていた。
セリフを口にしたり、戸を開けてみたり。
必要な小道具を思い出してみたり。
ここは、全員のロケ地なのだ。
贅沢においら一人で、少しでも満喫できたのだから十分だった。

翌日総仕上げが終われば稽古になる。
稽古になれば、監督中心に動くことになる。
自分で気持ちを入れて行ったり、人物像を固めて行ったり。
そういう作業は、自分でみつけていかないといけない。
本当の勝負は、ここからだ。
思う存分、演じ切る。成瀬凛太朗を生きる。
そこだけを目指す。
そういう段階が近づいてきている。

あと3日。
もう、すでに、役者モードにスイッチを入れている。
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2016年10月20日

美術設営3日目

搬入から始まって5日目。
急ピッチで作業を続けていく。
本当に、うちの連中はよく動く。

当初、美術の杉本さんからは2週間は設営に時間が必要じゃないかと言われたのを覚えている。
それを、1週間で自分たちでもやるのでと、お願いしたはずだ。
その1週間を搬入日を事前に設定することで、更に短くできればともくろんでいたのだけれど・・・。
これは、本当に、まさかまさかだけれど。
たったの3日で美術設営が、90%完了してしまった。
残りの作業は、汚しであったり、釘頭を塗ることであったり。
或いは、片付けぐらいのものだろうか?

設営している最中に、スタッフさんが初の現地入りをする。
監督、助監督、撮影監督、製作部。
スタッフジャンパーを役者からのプレゼントとして送る。
こんなに喜んでいただけるとは、思わなかった。
打ち合わせ前に、現地のツアー。
ロケ地をみるたびに、驚きの声やため息が上がる。
すごいな。これは・・・。
思わず呟いてしまうスタッフさんも。
クリエイティブな、場所を少しでも刺激できることが出来たんじゃないかと一安心。

スタッフ一行を、用意しておいたスタッフルームに案内して、打ち合わせが始まる。
おいらは、外して作業を続行する。
昼過ぎに打ち合わせが終わり、しばしスタッフさんと歓談。
撮影監督の吉沢さんが、積極的に色々な意見をしてくださる。
本日予定の晩餐にも招待するも用事が入っていた。
明日は、監督と助監督で撮影方法について綿密に打ち合わせるという。

その後製作部打ち合わせに参加して、必要なものが他にないか確認。
いくつか、当たらないといけなくなり、連絡作業を続ける。
そこで、ようやく、皆に遅れて昼食。
簡単にカップラーメンで済ませて、作業にやっと合流する。
幸い、監督が残ってくださったので、色々と確認しながら装飾を進められた。
気づけば、もうやれることがほとんどないという状態になっていた。

買い出し班が戻ってきたころはすでに辺り一面真っ暗。
監督と前日お誘いしてあった音楽監督の吉田トオルさんが話をしている。
この何気ない二人の会話が、映画を大きく変えるのは、18年間でよくわかっている。
冗談交じりでどこまで本気かもわからない会話もあるけれど、お互いクリエイティブ脳を刺激している。

今日まで頑張ってきた仲間たちに、BBQを用意していた。
もちろん、スタッフさん以外には参加費があるけれどさ。
任意だったのに、全員残っていた。
事前に用意してあったBBQセットを広げて、フランクフルトや肉が焼けていく。
おいらは、ビールで乾杯すると、大した量じゃないのに、一気に疲れが来た。
今日はスタッフさん対応で気疲れもあったからなのか、それとも設営が順調で安心したからなのか。
肉を焼くのは、中野圭と、女優達。
おいらは、食べるばかりで申し訳ないなぁと思ったけれど。
とにかく、見れば、皆が笑顔で、楽しそうに焼いたり食べたり話している。
スタッフジャンパープレゼントもそうだけれど、こういう映画とは一見関係ないことこそ重要だと思う。
自然、映画の話が出るし、皆の思っている方向性が一つになっていくのがわかる。
映画の座組とは、ファミリーだ。
けれど、撮影期間が短い。
それをしっかりと座組にしていくことこそ、おいらの出来る最大の演出だと思う。

飲みながら、美術の伊藤さんに確認する。
伊藤さんも今日までに出来上がった美術は、金曜日ぐらいに出来る予定だったという。
ここから先は、自分と大道具さんでほぼ出来るから、稽古しても平気ですよと頂く。
まぁ、男連中は、置きっぱなしの材料の片付けや、裏導線ぐらいはやらないとだけどさ。
それにしても、ここまで順調に進むのは、全員が、頑張ったからだ。

トオルさんと監督と、色々に話す。
すぐに帰ると言っていた監督も、思ったよりも長くBBQに参加してくれた。
人生初のBBQだなんて言っていたけれど、監督も楽しそうだった。
うちの連中は、本当によく動きますよ。と監督に言うと、深くうなづいた。
通常の映画では、あれやっといて!と頼める人なんか何人もいない。
監督が、その場でぱっと誰かに頼むとあっという間に、地面までならしてしまうのだから。

印象的だったことがある。
トオルさんが言った言葉。
「だって、前墳は最初からそうだったじゃない。」
つまり、プロの劇団だったんだから!という意味だ。
時々、ニュースで、何かの事件があるたびに「劇団員の・・・」とか「元劇団員」とか頭につく。
ああいう報道は、いわゆるアマチュアの自称役者的な、揶揄が入っているなぁといつも感じる。
実際にこの世には学生のアマチュア劇団というのもあるんだろうと思う。
おいらたちは、旗揚げ当初から、プロの劇団だとやってきている。
それこそトオルさんはプロミュージシャンで、そういう人がオペレーションをやってくれていた。
制作でも、受付でも、場内整理でも、大道具でも、音楽でも、演出でも、
ちゃんと、プロの対応が出来るように積み重ねてきた。

きっとスタッフさんたちの中には劇団の代表作の映画化というのを聞いただけだから。
「劇団」というもののイメージがあったと思う。
映像畑の人だから、色々な撮影現場に来る「劇団員」のイメージもあったはずだ。
その想像とは、きっと色々ずれていたのだと思う。
どうやってこのロケ地を借りたのか。
想像していた美術セットを、超えていたこと。
スタッフルームやスタッフジャンパーの準備。
あとは、芝居を見せるだけだ。
こいつらは、プロの作品制作集団なのだと、思っていただくには。

翌日の入り時間を少しだけ遅く設定した。
これも、今まで早入りしていたメンバーへのご褒美だ。
大変なだけじゃ、何も進まない。
少しずつ、役者の脳になっていくべきでもある。

稽古をしよう。
あのロケ地には。
あのパンパン小屋がすでに存在する。
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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 07:57| Comment(0) | 撮影準備 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする