ロケ候補地が、NGとなった。
連絡があり、朝から向かったところ、そうなった。
理由、詳細については、特に公開するようなことでもない。
何度も頭を下げてお願いしたけれど・・・。
むしろ、40年以上あの地で美術製作をしてきた先輩方に逢えたことだけでも自分にとってプラスなんだと思うしかない。
今日も、たくさんの話を伺った。
どうして、あんなに、美術家さんたちは、自分を小さく見積もるのだろう。
でも、本当に、あそこは良い場所だった。
何十年という芸術が生んだ場所だった。
あそこで、撮影出来たら、きっと、その空気も映るんだって思っていた。
悔やんでも、悔やみきれない。
お話をさせていただいて、お暇してから、暫く、ちゃんとした記憶がない。
とにかく、茫然としていた。
すでに美術の図面があり、スケジュールの第一弾も提出している。予算組だってある。
シナリオだって、その図面を元に書き直しているのだ。
そういう全てがリセットされたという事だ。
いや、リセットまでは行かない。
ここから、更に、探し出して、その条件次第なのだから。
すぐに連絡するべきスタッフさんたちに電話したけれど、誰も繋がらない。
おいらは、美術家さんたちが教えてくれた、いくつかの建物をそのまま観に移動した。
一体、何キロ移動したかわからないけれど、教えてくれた建物は、全て、もう解体されていた。
トタンで出来た建物は、どんどんなくなっていっている。
確かあの山道の途中にアトリエがあったよという情報も、住宅地になっていたりする。
数時間、移動し続けて、空き家をいくつか見つけた頃には、夕方が迫っていた。
暗くなる前に帰宅して、今度はネットで各フィルムコミッションや、不動産業者に連絡をする。
かつてNGになった候補地などを再度洗い直さなければいけない。
監督と電話が繋がり、事情を説明する。
監督に説明できたから、やっと俳優陣にも連絡網を回す。
皆には謝るしか出来ない。
ようやくここまで辿り着いたのに・・・。
皆、力を落としていないだろうか?
とても心配だ。
何人か、あの候補地を目にしたメンバーは、バラック小屋の連想を深めていた。
本当にごめんね。
おいらが至らなかった。力不足だ。
まず最初に、皆の顔が浮かんでさ。
それからじゃないと、なんにも出来なかった。
考えてみれば、ここまで、様々な事が順調に進んだ。
予定よりも遅れたことや、予定していなかったことや、問題も起きたけれど。
それでも、基本的には順調すぎたと思う。
あのロケ候補地を見つけたことから始まって。
某映画の廃材パネルを引き取れたこと。
朝陽館という、戦前から続く旅館から、様々な家具や建具を頂けたこと。
他の材料も、どんどん、連絡が重なって、これは運命のように感じていた。
そんな時に、いつだって、壁が現れる。
皆にも、今から更にロケ候補地を探して選定できるように、お願いをする。
そうだ。
なんだって、そんなに簡単に進むはずがない。
色々な事が起きるのだって、想定していた。
確かに、大きなショックだったけれど。
ここで、おいらが下を向いてしまったら、皆がどう思う?応援してくださった皆様がどう思う?
大丈夫だ!と、がははと笑うんだ。
例え、カラ元気でも。
動け。
探せ。
落ち込む前に進め。
泣くのは子供だ。
子供が大人になるのは、唇をかみしめたその日からだ。
この映画は絶対に素晴らしい作品になるんだから。