舞台ピーターパンの事故のニュースが流れた。
小劇場の世界でも、舞台事故のニュースが流れるとすぐに噂になる。
3mの高さから頭を下に飛び込んで、1m手前で止まるという仕掛け。
驚いたのはその危険性なのに手動でのロープ操作で。
操作を誤って、眼窩底骨折になったという報道だった。
細かい部分まで報道されていないし、実際の安全装置がどういう仕掛けかもわからない。
頭を下に飛び込んで、骨折だけなら、恐らく、なんらかのブレーキはかかっていたけれど、遅かったという事だろうか。
少なくても3mから頭を下に飛び込んでなんのブレーキもなければもっと重大な事故になったはずだ。
報道では触れていないけれど、当然、警察が事故の検証もしている筈だ。
映像の世界でも、舞台の世界でも、事故は起きる。
ニュースになるのはその中のごく一部だったりする。
映画で俳優が骨折したというニュースなど時々見かけたりするけれど。
詳細や、検証結果などは余り報道されない。
報道されないような細かい事故もたくさんある。
劇団でも、今まで事故がゼロだったわけではない。
舞台前のリハーサルで、舞台から役者が落ちて救急車が来たこともある。
その時は、当然、警察の現場検証があった。
大きな事故はそれぐらいだ。
後は、役者が自分から壁に向かって激突してしまったとか、立ち回りの稽古でとか。
擦り傷や、切り傷、打撲程度の怪我は実は日常茶飯だったりする。
それも、怪我がないように細心の注意を払っている。
舞台の世界は、恐らく、映像の何倍も事故に対しての注意を払っている。
舞台本番は実際にお客様の前で行われることであり、本番中の事故は、公演の中止にも繋がるからだ。
俳優が裏導線を移動中に釘一本踏んでしまえば、その舞台は終わってしまう。
舞台監督は、過失が認められれば、当然、逮捕される責任まである。
本番やリハーサル前に、必ず明るい中で、危険な場所がないか注意する。
俳優が宙に浮いたり、舞台セットの転換や、暗転などの、危険性の高いものは入念にリハーサルをする。
舞台の天井からぶら下がった照明はネジで止めた上に、チェーンでセーフティをかけている。
釘の頭が少しでも飛び出ていれば、打ち込むなり、養生テープで保護をする。
安全性の確保は、公演の成功を祈願すれば当然の事だからだ。
舞台監督は、何よりも安全性を考えて仕事をする。
聞いた話だと、映像の世界でも当然、事故に対しての注意を払っているというけれど。
舞台ほど徹底はされていないんじゃないかと聞いたことがある。
事故が起きても、ただちに中止に繋がらないし、観客の前でもない部分では、猶予がある。
例えば、セットのパネルが倒れてしまっても、元に戻せばいい。
普通のパネルが倒れるぐらいでは怪我をすることはほぼないし、お客様の前でもないのだ。
撮影現場で、釘が落ちていることぐらいなら、時々あるよなんて聞く。
釘一本落ちているぐらいで怪我をする可能性なんてほぼないのだから、舞台だと神経質になるだけだ。
大きな怪我の可能性がなければ、そこまで神経質にならないでも済む。
逆に怪我の可能性があるなら映像マジックでごまかせる範囲でどこまでも安全を徹底する。
カメラに映らなければ、安全帯をつけても問題ないからだ。
今回のセブンガールズ。
今の計画のままの美術製作で進むなら。
おいらは、この安全性に特に注意を払おうと思っている。
映像には映らないし、場合によっては神経質すぎる部分も出てくると思う。
ただセットを組んで、撮影するだけなのに、そこまではいいんじゃない?という部分までチェックしたい。
美術さんは、恐らく、ディティールまで拘ることになると思う。
セットを組み立てれば、当然、撮影効率を考えたりすることにもなるだろう。
だからその脇で、徹底的に、おいらは安全性に注目して、注文を付けようと思っている。
その場で美術を一緒に創りながら、ここは人が通るので、危ないです等、声を掛けようと気にしている。
おいらがたんこぶを作っても、笑われて終わりだけどね。
なるべく、俳優たちが安心して撮影に臨めるように、そこに拘るつもりだ。
もちろん、舞台とは色々な面で違いが出てくるのも、想定している。
安全性に関しては、誰でも、何人でも気にしていいのだ。
複数人が気にすれば、それだけ安全性が高まる。
美術のディティールや、大道具の段取りは、専門家がいるのだから。
おいらは、安全チェックこそ、わかる範囲以上に見るべきだと思っているのだ。
今までの舞台でも、舞台監督さんに、確認するようにしてきた。
それを更に入念に出来るようにしたい。
まして、地面だ。舞台ではない。
小石が落ちているのが普通の事で、小石で怪我しないとも限らないのだから。
勢いでやることは出来る。
美術の建込みは、夢中にもなる。
でも、そこで、安全について、ちゃんと考えようと意識しておく冷静な自分でいたい。
それは、転ばぬ先の杖だし、なんの役にも立たない可能性も大きいけれど。
そういう面では、常に最悪の事も想定して動くのが何よりも安心を生む。
安心があれば、それだけ、芝居にも余裕が出来ると思う。
舞台や撮影現場での事故のニュースを見るたびに。
読み流さずに、ちゃんと、詳細を確認する。
安全のための施策をどれだけしても、ある一定の確率で事故は起こりうる。
多くのケースを把握しておくことは、全ての舞台人にとって、重要な事だと思う。