土用の丑。鰻を食す。
最近は有名になったけれど、この日に鰻を食べるのは、平賀源内の発案とされている。
夏場の鰻は旬ではなくて、なかなか売れない店主が相談したところ。
丑の日は「う」の字から始まる食べ物を食べたほうが良いという風習を利用して、店先に「本日、丑の日」と張り出したというのである。
今では、土用の丑に鰻を食べれば夏風邪をひかないだとか言われるけれど。
まさか、販促のために考え出された誰かのアイデアなんて、誰も思わない。
それも、実は旬ではないだなんて・・・。
もっとも、今は養殖も多いし、この日が一年で一番売れるから、この日が一番味がピークになるようにしていると思うけれど。
そこまでわかっているけれど、鰻を食す。
別に夏風邪どうこうでも、縁起が良いとも思っていない。
年に何度も食べられないけれど、たまに食べたくなる鰻。
こんな日に食べないと、ほとんど、食べないしさ。
それにしても、通説が本当だとすれば、平賀源内という人は素晴らしいアイデアを持った人だ。
購買層が求めていることをなんというか、とても理解している。
鰻なんかは、やっぱり、何かのキッカケというか、そういうものがないと手を出さない。
この日は食べる日だよって言われてしまえば、納得してしまう。
本当に、素晴らしい発明王だ。
相談した鰻屋さんはどう思っただろう?
そして、そのアイデアが、100年以上経過した今も有効であることをどう思うだろう。
多分、鰻屋は思ったはずだ。
もっとうまい鰻を作ろうとか。
夏場は、鰻じゃない料理も出した方が良いのだろうかとか。
涼しく食べられるような新メニューを考えようとか。
この際、店だけじゃなくて、屋台や弁当も考えようとか。
鰻屋の考えられる範囲で、アイデアを絞って絞ってだったのだと思う。
それが、全然違う発想が来て、有効だったのだから、さぞかし驚いただろうな。
今日、めちゃイケを観ていて、もうただただ号泣していたのだけれども。
山本さんは、やっと仲間に会えた時に、芸人の流儀を選択していた。
多分、芸人は芸人らしく、皆と再会しなくてはいけないという範囲で考えた結果だったのだと思う。
けれど、求められていたのは社会人としての態度だった。
芸人であるけれど、同時に社会人でもあるのだということに考えが至っていなかった。
もちろんそれはカメラの前だったからなんだと思う。
それまでに流れた映像では、社会人として反省して地道に活動している姿が放映されていた。
鰻屋にしても、芸人にしても。
自分の生きる世界の中だけで考えれば、その中でしか生まれない答えに辿り着く。
それは、仕方のないことで、当たり前の事だと思う。
誰だって自分が生きる世界で苦しんで、悩んで、アイデアを絞り出すのだから。
そう思った時。
役者という存在はなんて不思議な存在なのだろうと思った。
武士を演じたり、サラリーマンを演じたり、病人を演じたり。
それぞれを演じながら、その世界をみつけていくのが仕事なのだから。
その世界ではその世界でしか生まれない発想がある。
その外側に存在しながら、その内側に入ろうとする。
鰻屋に感情移入することも、芸人に感情移入することも出来なければ、演じることが出来ない。
それは、相手の気持ちがわかるという事ではない。
相手の気持ちの筋道が解るという事でないといけない。
どうしてそういう考えに至るのかがわかるぐらいじゃないといけないということなんだから。
そういう意味では作家も同じだ。
その人物がどんな人物か、どうしてそういう考え方なのか、そこに至らないと描写できないのだから。
めちゃイケのラスト。
極楽とんぼのケンカコントが始まった。
それが、なにせ、おいらは一番泣けた。
笑いだから、涙なんか流していないけれど。
2人でコンクリートまみれになりながら喧嘩していた。
2人はどんな思いで、あのケンカコントをしていたのかなぁ。
もちろん、謝罪のくだりも泣けてしょうがなかったんだけどさ。
これ、ずっと、やりたかったんだなぁ・・・って思ったらね。
もう、涙腺崩壊だった。
たくさんの思いがある。
たくさんの立場がある。
人それぞれの生きる世界がある。
そのどれもが、同じ方向を向いているわけではない。
全てが違うから、いつも、ほつれていく。
ほつれても、ほつれても、誰かが何かが何とかする。
現れて、ほどいていく。
そのほどける瞬間こそ、たぶん、目指すものだ。
演劇や映画や、お笑いや、おそらく全てのエンターテイメントの目指すものだ。
最後、ネタで終わったのもきっと、そういうメッセージなんだって勝手に受け取った。
きっと、2人でお笑いライブをしながら、色々な事がほどけていくんだろうなぁ。
土用の丑。鰻を食す。
平賀源内のアイデアに乗ってしまったおいらだ。
ありがたいアイデアを出してくれたものさ。
おいらなんかにゃ、とても、思いつかないアイデアさ。
鰻は美味い。
ごちそうさま。