梅雨明け宣言が出た。
ここ数年は梅雨明け宣言直後に雨の日が多いけれど。
今年はどうなんだろうか?
気象庁が発表する梅雨明け宣言だけれど、空も発表しているような日だった。
夕焼け。ピンクの雲が一面に広がって、夏の風が吹いていた。
夏がやってくる。
既に学生たちは夏休みに入っている。
電車に乗っても、街に出てもそれはすぐにわかる。
中学生の女の子がへそを出すような格好で自転車に乗っている。
なんというか、世の中もすっかり様変わりしたもんだ。
今の学生の夏休みって、どんな感じなのだろう?
多分、おいらたちとは、ちょっとずつ違うんだろうな。
朝早く起きてさ。
ラジオ体操に行って、ハンコを貰うんだよ。
帰って来てから朝ごはんさ。
テレビじゃ、甲子園が延々と放送されている。
広島の日、長崎の日、終戦の日。
それぞれ、特番が放送される。甲子園でもサイレンが流れる。
虫を取ったり、川に入ったり、海に入ったり。
帰宅したら、麦茶をがぶ飲みするのさ。
日に焼けすぎて、ボロボロになった肌をヒリヒリさせて、そのまんまバタンQさ。
最近の夏は、昔よりもずっとずっと暑くて、外で走り回るのも大変だ。
今の子供たちは、皆、肩から水筒をぶら下げてる。
おいらたちの頃は、水筒なんて持ってなかった。
公園の蛇口の水をそのまま飲んだりしていたな。
あれは、あれで美味かったんだけどな。
日射病なんてのはあったけど、熱中症なんて言葉はなかった。
蝉が暑さで死ぬようなことはなかったもんな。
生きているだけで、たくさんのことを諦めてきたはずだ。
小さい頃は、世界最強になろうなんて、一度ぐらいは考えたはずだ。
プロ野球選手になりたいとか、サッカーをやりたいとか。
全部100点取りたいとか。
他の誰よりもカブトムシを捕まえたいとか。
一番になりたいって気持ちに何回もケリをつけてきた。
大きくなると、あの学校に行きたいとか、あの子と手を繋ぎたいとか。
でも、自分だけじゃどうにもならない事にも何度もぶち当たっていく。
そうやって、いつの間にか、色々なことを諦めたり、色々なことを悟っていく。
それでも、自分の中に何かが残っていたりする。
それはもう、一番を目指すとかそういうことでもないし、「欲しい」という感覚ではないものになってる。
既に、自分の生き方というか、スタイルに近い何かが生まれている。
そして、本能的に、ここだけは折れてはいけないんだよという何かをいつの間にか持っている。
人によってはそれを硬直というかもしれない。
柔軟であるべきだけど、ブレナイことも大事だなんて、自己矛盾を結果的に抱えながら生きることになる。
そうやって歩いてきた道をふと振り返ると、たくさんのものが落ちている。
夏は、そんな落とし物を見つけるような季節だ。
自分は今も自分でいられているのか?なんて、思ってしまう季節だ。
学校が休みになって、長い時間を貰って、子供の頃、思春期の頃、自分について考えたあの蒸し暑い夜。
あの夜の記憶が、ぶり返してくる。
寝苦しい夜が、やってくる。
夏は夜なんだよな。
梅雨が去った。
新しい季節がやってきた。
この季節が終わる頃。
セブンガールズの映画撮影の季節がやってくる。
自問自答の夜の季節を越えて。
自我解放の秋がやってくる。