第二稿、転送後、監督からもらった設定資料を清書作業する。
事前に役者にまとめてもらった、情報と併せて、スタッフさんに渡せる資料に仕上げている。
今日中にも終わるだろうと高を括っていたのだけれど、思ったよりも時間がかかる。
通常映画のシナリオは80ページぐらいだという。
それが今回のシナリオは優に130ページを超す。
シーン数も、当然、通常の映画の倍以上ある。
その上、登場人物も30名を越えている。
製作スタッフや助監督、撮影スタッフは、シナリオから、様々なイメージを起こす。
その上で、カット割りを決めたり、絵を決めたり、段取りをまとめていく。
けれど、この膨大なシナリオに、とても困惑しているらしい。
先日のビデオ会議でも、数割はその話になった。
難解過ぎて、じっくりと時間をかけて取り掛からないと、とても理解できないのだという。
シナリオを読む前に、舞台のDVDを観る方が良い。そうなったスタッフさんもいる。
どのシーンが、どのエピソードの前振りで、どうつながっているのか。
文字だけ読んでも、中々、イメージできないのだろうと思う。
それは、もちろん、想定内で、そのための資料になるはずだと思っている。
各登場人物一人一人のプロフィールやイメージカラー。シナリオ内で起きること。
人物関係表などをひとまとめにして、少しでも物語の世界が解るようにしている。
シナリオを解析する手掛かりになるような資料になれば・・・と思っている。
今も他の映像作品を手掛けていて、じっくりと手を付けられるまで時間がかかる。
とりあえず、作品イメージだけでも・・・というのすら、中々難しい状況なのだと思う。
主人公が一人で、そこを軸に進んでいく物語ではない。
多くの娼婦の群像劇で、様々なエピソードが絡み合いながらクライマックスに向かっていく作品だ。
様々なピースがあるから、余計にわかりづらいのだと思う。
でも、この作品だからこそ、応援してくださった皆様がいて、映画化が決まったのだ。
これを単純化してしまっては、約束の反故になってしまう。
単純化する事よりも、おいらに出来ることがあるとすれば、理解しやすい入口を創ることしかない。
設定資料を読んで、役のイメージが出来れば、またシナリオを読んだ時に違うイメージになると思っている。
もちろん、この資料は、本来は美術さんやメイクさんなどに渡すつもりで創ってきた。
いわゆる、この娼婦の部屋はこんなイメージだとか。
この娼婦の髪形はこんなイメージと、考えやすくなるようにだ。
いずれ必要になるなら今からやっておこうというものだ。
作品そのもののイメージがわかりやすいように・・・というわけではなかった。
そう思って、手を付けていたものが、こんなふうに役に立つんじゃないかと広がっただけだ。
本来は各娼婦のエピソード一つだけでも映画にすることは可能だと思う。
掘り下げたり、心象風景を重ねたりすれば、全然出来る。
それが、娼婦の数だけエピソードがあって、それが複雑に絡み合っていく。
それがこの作品の面白さで、それこそラストのカタルシスに繋がっていく。
そして、おいらは、この作品の面白さはそこだと思うし、おいらだけじゃなくて、それを応援してくれた人がいるのだ。
資料のページ数がどんどん増えている。
明日もビデオ会議の後、作業の続きだ。
道は見えている。
真っすぐ進むだけだ。
仮にそれが無駄な作業になったとしても。
おいらは、なんにも思わない。
少なくても、作品世界に、資料を作っているおいらが一番深く深く入っているからだ。
明日には完成させて、監督に転送したい。
監督がチェックして、直せば、すぐにでもスタッフさんに送れるからだ。
どんどん進めよう。
どんどん進もう。
まだまだこんなものじゃない。