信じられないような突然の豪雨にあった。
とにかく、霧ではなく、雨でほんの数メートル先が見えない。
強烈な風で、横からも下からも雨が叩きつける。
傘などなんの意味もなさない。
思わず雨宿りに飛び込む。
こんな雨が長く続くわけがない。
それなのに、雨脚は更に勢いを増して、ついには車道が川になり、歩道まで水が溢れた。
このままでは、帰れなくなってしまう。
そう思った頃、ようやく雨が弱くなって、傘をさしておいらは歩き出した。
駅まで歩くと、線路が冠水して動かない電車まであるという。
洪水注意報なんて、それほど、気にしたことがなかったけれど、実際に目にした気分だ。
きっと、被害にあわれた方もいらっしゃったと思う。
そういう方には申し訳ないけれど。
信じられないような雨の中。
おいらは、かすかに興奮していた。
自分が生きていると、強く実感した。
雨が弱くなった瞬間、少し寂しくなったぐらいだ。
そして、雨粒が小さくなって、ぶわっと風が吹いた時に。
夏の匂いがした。
雲が移動しただけで、きっとどこかで嵐は続いてた。
それは遠くに聞こえる雷鳴でもわかった。
見上げると、星。
見渡せば、月。
街は、どこもかしこも、濡れている。
まるで、大巨人がシャワーを使って、街中を洗ったみたいだ。
雨上がりの夜空だ。
多分、なんだってそう。
ずっと晴れているようじゃ、くすんでしまうよ。
時々、雨が降って、時々、土砂降りが降って。
そのたびに、リニューアルするのさ。
怖がっても仕方ない。
それは、当たり前の事なんだ。
紫外線の照り付ける、あの太陽の下も、悪くはないさ。
でも、こんな嵐も、また悪くない。
嵐の中を無理に進む人もいた。
水しぶきをあげて、とばす車もいた。
雨宿りをする人がいて、自転車でずぶ濡れの人もいた。
おいらは、ただ嵐が通り過ぎていくのを眺めることを選択した。
今、おいらたちは嵐の中にいる。
それまでとは勝手の違う事をしているんだから。
どう立ち向かうかね?
どうしようかね?
そして。
どんな雨上がりの空が待っているだろう。
おいらは、嵐の中でずっとドキドキしていたんだ。