子供の頃、社会科見学という授業があった。
今もあるのだろうか。
あるんだろうなぁ。
でも、その殆どが記憶にない。
確かに美術館や科学館、海の科学館、博物館等々。
様々な所に行ったと思うのだけれど。
あの時に見たあれはすごかった!とか、一つも記憶にない。
思うに、おいらのような奴にとって、社会科見学なんて、遠足の一種のようなものだった。
集合して、電車に乗って、あとは弁当やお菓子だけが楽しみなだけだ。
実際に行く場所の事も、その貴重な資料も記憶に残るわけがない。
いつもの教室から出ての課外授業というだけで充分だったのだ。
今、思えば、実に勿体ない。
唯一記憶に残っているのは、パン工場だ。
なぜかパン工場だけは記憶に鮮明に残ってる。
給食で食べるコッペパンを焼いている工場に行った。
強烈な焼き立てパンの匂いの中で、次々にコッペパンが出来ていった。
やっぱり、美術館だったり科学館とは違う、実際に稼働している工場は迫力が違ったのかな?
記憶をたどると新聞の印刷工場や、鉄工所にも行ったような気がするんだけどね。
パンは、やっぱり、食べる物だから、単純に記憶に直結しちゃっただけなのか。
それとも、脳科学にあるように「匂い」は記憶に強く関係しているのか。
それにしても、情けないのである。
お弁当じゃなかったら、今度はパンなのだから。
覚えている人はきっと覚えているんだろうし。
中にはその経験で夢をもってその道を歩んでいる立派な子もいるんだろうなぁ・・・。
ああ、なんたることだ。
修学旅行だって、ちっとも修学していない。
なんでもかんでも、お祭りみたいに考えていたんだなぁって思う。
それだけ、たくさん、学べる機会を逸してきたという事だ。
まぁ、そうやって、なんでもかんでも楽しめたのなら、そういう勉強はしたのだと思うしかない。
でも、遠足なんかだと、わざと電車で隣の車両に乗って先生を困らせるようなことしてたからな・・・。
本当の意味で何かを学べたのかと聞かれたら、疑問符だらけだよ。
そんなおいらは大人になって。
今、実は社会科見学会を企画している。こっそり。
あ、いや、こっそりなんだから、すでに会ではないのかもしれないけれど。
別に誰かを誘おうと思っているわけでもないので、一人で行くだけなんだけど。
ああ、そうか。誰か行くかなぁ。
でも面倒くさいから、結局、一人で行くのだけれども。
九段下には靖国神社があるから、戦時中の記録が多く集まっている。
その中でも、「昭和館」という博物館がある。
ここは、戦中から戦後にかけての一般庶民の暮らしを記憶にとどめるための博物館だ。
実は先日の朝陽館に行くことが決まった時に、最初の内見で時間があったら行こうと思っていた。
たまたまその日が稽古前になったからあまり時間もないし、やめたのだけれど。
そこには様々な写真や、当時の生活の必需品などが集まっている。
集まっているどころか、今も蒐集し続けている。
そこで、当時の物を見て、或いは写真や、記録を見て。
ひょっとしたら、芝居でも、他の作業でも見えてくるものがあるんじゃないかって思ったのだ。
近くの博物館では、漫画家の水木しげるさんの特集なんかもやっている。
実は水木しげるさんは南の孤島から帰ってきた復員兵だ。
まさに、新崎のエピソードを生きてきたのが、水木しげるさんで、その時に片腕を失っている。
水木さんが残した戦時中から復員するまでの記録を特集しているらしい。
これなんか、なんというか、作品のど真ん中にある骨のようなものを手に入れられるような気もする。
300円とか無料とかの入場料で、勉強できる場所があるなんて、なんて素晴らしい国だろう。
ひょっとしたら。
子供の頃に昭和館に行っているかもしれないなってふと思った。
もう記憶にはなんにも残っていないけれど。
多分、行ってないなって思う。わからない。
もったいなことを繰り返してきたものだ。
おいらは、なんだか、大抵のことは大人になってから学んでいる気がするよ。
ガキの頃に学んだことは、全員で走り回ったり、大声で笑う笑い方だったり、そんなことばっかだったよ。
そんなんだから、結局、復習が必要になるんだ。
お弁当は作らないよ。
お弁当ばかり楽しみになっちゃうからさ。
お菓子も持っていかない。
今更だけど。
時間が空いたら、社会科見学をしようと思うんだ。
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