2016年05月14日

宿る精霊

明日は朝陽館に再訪する。
いよいよあの歴史的旅館もカウントダウンに入っている。
なんとなく足を踏み入れるのが悪い気がしてしまう。
そのまま廃棄されるぐらいなら。
もう一花。映画で活躍してくれたらと願いながら。

時間とはなんなのだろう?
バンドを組んでいたジョンは、古いギターほど良い音がすると断言していた。
新しい木材が出て、新しいピックアップが作られて、新しい塗装剤が生まれても。
到底、昔のギターには及ばないのだと。
今や、ギターを弾いた音を加工できる時代なのに。
それは、間違いないんだとはっきりと言っていた。
聞く人の耳で、音が変わる場合もあるだろうけれど。
そこに、不思議な何かを感じてしまう。
ヴァイオリンだってそうだ。
億と言う単位の楽器が普通にある。
そして、その方が音が良いという。
時間が、音をふくよかにしていくのだという。

音と言うのは振動だから。
音が鳴れば、そこにあるモノは、全て、その振動を受けることになる。
その振動を繰り返し受けているうちに、当然、その振動に適した木目の詰まり方をしていく。
そういうことなんじゃないかなぁって聞いたことがある。
楽器は、時間が経てば、倍音が増えていくというのは、そう言われれば納得がいく。

きっとそれは、楽器だけにあるものではない。
時間が経過したものには、その時間を生きてきた爪痕が少しずつ残っている。
木材なら、乾燥と湿気を繰り返すうちに木目が詰まってくる。
小さな傷は、いつかどこかで、誰かが付けたもの。
大事に使われてきたものは、やはりどこか、大事に使われてきた痕跡が残ってる。

日本では長く使われた道具には魂が宿るとされている。
大工道具や、武士の刀、漁師の船や釣り道具。
中には、神社に奉納されるものまである。
その感覚は、現代を生きるおいらにも、すとんと理解が出来る。
野球選手のバットやグラブも、神のように崇めてしまう土壌があるんだ。おいらたちには。

精霊が宿るんだよ。
だから、おいらたちは、その精霊に愛されるように使わせてもらわなくてはいけない。

確か7月の解体と聞いている。
先日、内見に行った時から、また随分と片付いていることだろう。

どこか気おくれもするし。
それと同時に、そこに生きてきた道具たちに、もう一度出会えることが楽しみでもある。

精霊たちに愛されますように。
そう願ってやまない。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 02:10| Comment(0) | 映画製作への道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする