RGBとCMYKという2つの色の分け方をご存じだろうか?
印刷物などに関わったことがある人には馴染みのある方式だけれど。
普通に生きていれば、あまり、馴染みがないかもしれない。
例えば、プリンターなどに入れるインクが6色インクだと、CMYKの色が入っていたりするのではないだろうか?
RGBもCMYKも、その色が揃えば、全ての色を再現できる色だ。
RGBは、光の三原色と呼ばれる、レッド・ブルー・グリーンの3つの色になる。
テレビや、パソコンのモニターなどは、この三原色で色の諧調を表現している。
レッドが●%、ブルーが●%、グリーンが●%と比率を変えて混ぜることで、様々な色を表現する。
全てが100%になると、白になる。
そして、全てが0%になると、黒になる。
では、なぜCMYKという形式が必要なのかと言えば、それは、何に色を重ねるのか?という事になる。
つまり、テレビは何も光を当てなければ、真っ黒。だから三原色全てが0%だと黒になるという事。
けれども、印刷では、基本的に紙は白だから、全ての色が0%だったら、白になってしまうという事だ。
だから、RGBの反対色、シアン・マゼンタ・イエローの3色でCMYですべての色を表現する。
CMYの場合、全ての色を0%にしたら白、そして全ての色を100%にしたら・・・黒のはず。なのだけど。
実際には、混合して黒を出すことは非常に困難なので、Kという黒の色をもう一つ加えている。
正確には減色法とかあって、説明がめんどくさいけれど、ようするに、全て発色して、白なのか黒なのかという違いだ。
子供の頃、絵の具を混ぜていくと、どんどん黒っぽくなったと思う。それがCMYK。
赤と青と緑の、セロファンを合わせて光を当てると白っぽくなる。それがRGB。
なぜそんな色の話を突然するのかと言えば、舞台と映像で考えた時に、照明効果が変わるからだ。
舞台照明の基本は、暗転。
照明づくりの第一歩は暗転作りに始まる。
全ての明かりを消して、裏明かりの漏れや、手元明かりの反射までチェックする。
それで、劇場内が済みで塗ったような完全な暗闇になるまで明かり漏れを潰していく。
そこに、白や、赤やオレンジや緑の色の入った照明を重ねていく。
影の中に、光で世界を創っていくのが舞台照明だ。
明かり造りとは、まさに言い得て妙な表現だと思う。
一方で、映像では、すごい監督ほど、影の使い方が上手いと言われたりする。
もちろん夜間の撮影や室内での撮影もあるけれど、映像の基本は光の中での撮影だ。
それは、写真でも動画でも、光をフィルムに焼き付けて、それを再度再生させるからだ。
光ありきが映像なのだ。
もちろん夜間の撮影であれば真っ暗だから、そこに照明を足していく作業になるのだけれども。
とは言え、基本的にフィルムは暗い空間ほど、映像にノイズが乗ってしまうので避けられる。
光が弱ければ弱いほど、感度が低くなってしまうからだ。
だから、なるべく明るい環境での撮影を望むし、なるべく光を減退させない明るいレンズで撮影する。
明るいところで、影を創っていくことの方が何倍も難しいようにも思う。
先日の舞台の打ち上げで舞台照明スタッフとそんな話をした。
映像の照明の経験があるのか聞いたりした中でだ。
舞台は光の作り方。映像は影の作り方。
そんな話になって、とても面白くて、感動したのだ。
役者の顔になるべく影を創らないというベースは同じはずなのに。
効果的に映像のどこかに影を創ることで立体感を強調したりできる。
そういう面白さが、なかなか舞台照明ではないという。
舞台は元々立体なのだから、立体感を照明で作る必要性自体ないという。
同じ照明という作業なのに。
そして目指す場所も恐らくはそれほど遠くない所にあるのに。
やる作業が逆になっていく。
光を足す作業と、光を削る作業。
まるで、RGBとCMYKの関係みたいだねと話をした。
これは多分きっと、照明だけの話ではない。
例えば舞台音響だって、舞台だったら役者に聞こえるけれど、映像ではSEも聞こえないのだ。
同じ作品を、同じように演じていく中で。
逆相を描く作業というのが必ず生まれてくる。
描くキャンパスが違うのだから、当然、キャンパスに合わせた方法論が生まれてくる。
生の舞台の持つ質感がある。
役者同士で感じる空気感がある。
そういったものも、きっと変わってくる。
もう呼吸そのものが変わるぐらいのことかもしれない。
同じ景色を、2種類の方法で色分解できるように。
同じ作品を、2種類の方法で製作する。
きっと、そうなって初めてわかることがあるんじゃないか。
舞台照明スタッフとの話を思い出して、そんなことを思った。