おいらは劇団前方公演墳の旗揚げ時、劇団員ではなかった。
殆どが初舞台と聞いて、旗揚げのお手伝いをした。
むしろ、既に自分で作演出した作品を4公演やっていたし、心配だった。
旗揚げ公演2公演後に、この劇団に参加した。
その頃、この劇団はなんというか、今思えば皆が恥ずかしくなっちゃうことがたくさんあったと思う。
なんて言ったって、旗揚げ公演の最後が、ダイジェストだった。
なんと、旗揚げ公演は「前編」で、最後は物語が終わることなく「後編」のダイジェストで終わったのだ。
おいおい、嘘だろ?終わらないのかよ・・・。
そういう作品だった。
本当にそうだったんだから仕方がない。
とにかく、一言でいえばハチャメチャだった。
実際、演劇人たちにはすこぶる評判が悪かったらしい。
舞台をやってる人ほど、なんだこれ?こんなの演劇じゃない。
・・・などなど、好きなように言われたようだ。
随分、悔しい思いをした劇団員もたくさんいたんじゃないかなぁ。
まぁ、そんなことはね。
なあんにも、気にすることないんだけどね。
おいらが旗揚げ3作品目から参加して。
この劇団は面白いぞ。デビッド・宮原はどうも面白いぞ。
そんな風に感じたのは、実は、その評判の悪かった所だ。
とにかくそれまでにあった演劇、舞台、小劇場、その類の既成概念みたいなものを簡単に乗り越える。
え?いいじゃん。面白いじゃん。
・・・と、あっけらかんと、やっていく。
今はプロデュース公演なんかでね、時代劇や漫画原作の舞台があるけどさ。
ガンガン音楽かけて、クライマックスで殺陣をやって・・・みたいなの、当時はほとんどなかったしね。
これはこれで、新しいじゃんかって思っていたんだよ。おいらは。
芸人がするようなツッコミやボケまで台本に入っていてね。途中で紙芝居出てきたりさ。
おいらがそれまでやっていた演劇はずっと緻密で、ずっとアートも意識していたんだけど。
そんなことじゃなく、もっと、パワーみたいなものを前に出していくスタイルっていうのは斬新だった。
おいら以外にも、どこかで演劇活動をしていて参加したメンバーなんかは苦しんでた。
どうも自分のスタンスが狂ってしまう、芝居がなんだかわからなくなる、そういう思いがあったみたいだ。
実はちょっと相談されたりは、何度もあった。
小野寺君は、よそとの違いをどうやって、自分の中で処理しているの?
・・・そんなことを何度も聞かれたよ。
そのたびに、自分のスタンスを話したと思う。
そんな旗揚げから17年も経過してるんだから。
面白いね。
当時、非難した演劇人の劇団なんか殆ど解散してるんだぜ。
今、例えばデビッドさんが当時の自分の台本を読んだら、恥ずかしいなぁって思う箇所がたくさんあると思う。
こ・・・こんなこと、あり得ない!って思う箇所も、何か所も出てくるんじゃないかなぁ。
まったくお客様に説明がないまま、よくわからないボケが出てきたり、ハチャメチャすぎるもん。
逆に今、同じようなコトをやろうとしたら、怖くて出来ないだろうなってこともたくさんあると思う。
成田さんとかさ。出てきてデブって言われて、さしてウケナイまま退場してたからね。
あんなの、今やったら、大変だ。
でもね。
おいらは、やっぱり今でもそこが面白いんだ。
既成概念をぶっ壊す作品。
予想できる物語なんかなんにも面白くないもん。
すごくね?こんなのデビさんしか、思いつかないよ!そういう奴。
テレビドラマを見れば、プロデューサーやら倫理委員会やらプロダクションやら気を使ってる台本ばっかだよ。
ハリウッドの作品だって、半分も見たらその後どうなるかわかっちゃうような作品がいくつあることか。
それがダメとは言わないよ。そういうルールの中で名作も生まれるんだから。
でも、そういうルールなんか関係ないよっていう面白さもあるだろって話。
映画でもぶち壊してほしいなぁ。
もちろん、簡単な事じゃないと思う。
旗揚げの頃よりももっともっと広い世界でジャッジされちゃうしさ。
でも、そんなの関係ないじゃんね。
なあんにも気にすることない。
むしろ映画関係者に、非難されるぐらいの作風でもいいと思っちゃうぐらいだ。
2時間の芝居をぶっとおしで舞台と同じようにやって。
30台ぐらいアクションカム仕込んでおいて。
デビッドさんが、自分のリズムで編集して映画にするでもいいぐらいだ。
そしたら、撮影も2時間で済むしな。あはははは。
まぁ、既成概念みたいなものは既にいくつか乗り越えてる。
この企画自体が、既に、過去にあまり例をみない企画だからさ。
面白い作品を創れたら、それでいいよ。
それ以外は、小さい社会の中でのルールなんか、笑って乗り越えよう。
こんなことやっていいんだ・・・!
あの時、おいらが感じたモノは嘘じゃない。
未だにその驚きは自分の中に残ってる。
ROCKだしPUNKだし、チャレンジャーだったことだ。