ものごとを進めていくには、常に最低の想定と最高の想定が必要だ。
おいらの場合、最高の想定がどんどん先に進んで、妄想だって笑われる傾向にある。
でも、実はいつも同時に最低の想定もしている。
天変地異が起きて、撮影が延期になってしまう可能性だってある。
撮影費用が足りなくなって、費用の工面が必要になる可能性だってある。
映画祭出展の〆切に編集が間に合わない可能性だってある。
出来上がった映画をどの映画館も上映してくれない可能性だってある。
特に日本では有名な俳優が出演してなければ動員できないっていう考え方が根強い。
いや、おいらだって、知らない人ばかりの映画って中々見に行かない。
面白いらしいよという噂を聞いて、初めて人は動くから。
その最初の分母が小さければ小さいほど、上映館も減っていく。
どの映画祭にもノミネートさえされず、上映も少しだけになる可能性は、実際には充分にある。
そこまで想定していながら、なぜか、おいらはとても強気だ。
いや、なぜか?っていう言葉自体に意味を感じない。
確かに映画畑にいる人であればいる人であるほど、きっと、最低の想定の可能性が高いのだろうなぁ。
国内の映画の配給の常識だとか、どうしてもあるから。
でも、そんなものはおいらにはない。
良いものは良い。
興業は別物だと演劇でも知っているけれど。
演劇に比べたら、映画の世界は、事前に作品を見せたり宣伝できることが大きい。
だから、良い作品を製作すれば必ずどこかで火が付くと思う。
最低の想定をした上で、それに負けるような精神性だったら劇団なんか出来ない。
夢や希望と違う、もうちょっと冷静な何かだ。
支援者に、シルベスター・スタローン氏がいた。
まさか、カタカナで自分の名前を表記するとは思っていなかった。
しかし、ハリウッドから注目されるのは、とてもすごいことだと思う。
ふざけているのか?と思われそうだけれど。
スタローン氏の真贋はともかくとして。
おいらが思うにこの企画を知れば、必ずスタローン氏が支援してくれたことは間違いがない。
「ロッキー」という作品を知っていると思う。
テレビでも何度も何度も放映された。
あの映画が、どんな風に生まれたか知っているだろうか?
当時、まったく売れない俳優だったスタローンは、ボクシングの試合を観て興奮して数日でシナリオを書いたという。
すぐにこのシナリオをハリウッドの映画会社に売り込むと、スター主演での製作が決まりかけたそうだ。
けれど、スタローンは自分が主演じゃないと製作しない!と固辞。
結局、その主張は受け入れられたものの、低予算B級映画としてこの「ロッキー」は製作された。
もちろん、全く無名のスタローンが主演のこの映画はろくに宣伝もされず小さな上映館でのみ上映された。
ところが。
たくさんの人が泣いた。
たくさんの人が震えた。
たくさんの人が燃えた。
そして、その人たちが周りの人に、この映画を勧めていった。
瞬く間に「ロッキー」の上映館が増えていく。
ついには、全米チャートに登場して、最終的に1位さえとってしまう。
無名の俳優が主演のB級映画がだ。
それで、終わったわけじゃない。
そこに、更に、大きな大きな勲章までもらった。
アカデミー賞の受賞だ。
ロッキー・バルモアという無名のボクサーが、チャンピオンに挑みスターになる映画は。
シルベスター・スタローンという無名の俳優が、ハリウッドに挑みスターとなる姿と重なった。
まさにアメリカンドリーム。
自分の全てを懸けた映画で、文字通り、スタローンは夢を叶えた。
自分の力で。
自分の足で。
自分の営業で。
自分の夢に立ち向かった結果だ。
こんなことは決して珍しいことじゃない。
実は社会ではいくつでも起きている。
どこかの会社でもきっとあるはずだ。
起業して大きな会社に育てた人だっている。
もちろん、失敗した人はその何倍もいるかもしれない。
でも、更にその何倍も行動しない人だっている。
珍しくないのさ。
とにかく全力で挑む。
そして、人の心が動くなら、そこに何かは絶対に起きる。
クラウドファンディングだってそうだったんだから。
だからね。
真贋はともかくとして。
スタローン氏は、この企画を知ったら、支援してくれたと思う。
これは、かつての・・・俳優というより用心棒のフリーターだった・・・自分の姿だったんだから。
スタローン氏が自分を主演にしないと映画にしないと主張した時。
当然、最低の想定をしたと思う。
映画化が幻になるかもしれない。
撮影できないぐらいの予算しか出ないかもしれない。
製作しても上映館がないかもしれない。
そういう想定だ。
でも。
製作したら、絶対に観てくれた人は喜んでくれる。
そういう、大きな自信もあったはずなんだ。
そうじゃなきゃ、動けない。
そうじゃなきゃ、主役にしろなんて言えない。
チャンピオンのアポロに挑むが如く。
前のめりで進もうぜ。
ロッキーのように何度倒れても、立ち上がればいい。
そして決めればいい。
渾身の一撃を!