寺庵風太郎役 金子透 2015 前方公演墳/「劇」小劇場 撮影 SKY
悪夢を見た。
いつか見覚えがある夢だった。
おいらが劇団前方公演墳に参加したのは第2回公演が終わった次の週だった。
それまでは、本番だけ手伝っていたのだけれど・・・。
とある演劇集団に誘われたのだけど、ちょっと誘われ方に違和感があってデビッドさんに相談を持ち掛けた結果。
稽古を覗きに来いよ、という一言を頂いて、その日から毎週休まずに15年以上も稽古に通うようになった。
その日は反省会をやっていて、何をしていいのかもわからなかったけれど、次の週には稽古が始まった。
忘れもしない「吉宗暗殺(仮)」という作品。
まだ、デビッドさんは原稿用紙に手書きで台本を書いていた。
おいらはその最初の稽古で、主演の徳川吉宗役に自ら立候補した。
あっけらかんと。当たり前に。ちょっとやらせてよ。という感じで。
新参者なのにふてぶてしいというか、ずうずうしいというか。
どんな神経してるんだよ。そう思われていたと思う。
何週か後、おいらは、主演になった。
初参加で主演。
30人以上の大所帯の劇団。
殆どがロクに話もしたことのないメンバー。
笑いながら。
芝居をした。
本番直前。当時在籍していた島川に、えずいているのを見られた。
自分が最後のセリフ「征夷大将軍である」を成立させないと、30人以上の芝居を潰してしまう。
初参加の劇団でそんなことは出来ない。
緊張なんてとっくに通り越して、責任感で押しつぶされそうになっていた。
ケラケラ笑っていたけれど、本当は胃袋がボッコボコになってた。
どんな神経?
本当は、ただの弱虫で、びびってた。
その頃に何度も何度も、悪夢を見た。
龍馬を演じきるまで、毎公演、それがあった。
悪夢を見た。
いつか見た覚えがあるあの悪夢だ。
バンドを組もうと言い出して、ついにライブに出た。
バンドは全員、音楽が大好きで、音楽ばかりやったメンバーだった。
初めてのライブなんて、大抵は対バンだ。
つまり、よそのバンドと一緒にLIVEパフォーマンスを比べられる。
バカだから、当たり前に、トリをやらせろなんて言った。
本当にトリになっちゃった。
おいらはヴォーカルだった。
人前で歌を歌ったことなんて、数えるほどしかないのに。
バックバンドは、皆、何度もライブをしてきたメンバーなのに。
バンドのど真ん中で、マイクを握って歌うことになった。
人前に立つことも舞台に立つことも知っていたけど、久々の感覚が襲ってきた。
何度も何度も脱水症状で目が眩んだ。
恥をかかせちゃいけない。
思えば思う程、緊張して、えずいた。
弱虫め。
お前はすぐにそうだ。
大事な時にビビるんだ。
その時にも見た。
あの悪夢を。
悪夢を見た。
劇団員もデビッドさんも。
おいらを無視している。
そのうちに、全員でおいらを口々に非難する。
お前のせいだ。
お前がダメだからだ。
お前はいつもそうだ。
でも、おいらは、歯を食いしばって耐えている。
悔しくて、情けなくて、自分が情けなくて、それでも、耐えている。
全員に白い眼を向けられながら。
そういう夢だ。
こんなもの、つまらない夢だ。
目覚めると、ほっとする。それだけの事だ。
実際にそんなことがあるはずはない。
おいらが何をしたって、おいらを責めるような劇団員は誰もいない。
そんなことは知っている。
たかが、悪夢でしかない。
子供が親に捨てられる夢を見るようなものだ。
久しぶりに悪夢を見た。
いつか見た覚えがある、つまらない悪夢。
色々乗り越えてきたつもりなんだけどなぁ。
もう大抵の事には緊張しなくなって久しいのになぁ。
相変わらず、おいらは、弱虫でビビリで、情けない奴だ。
いつかと同じように。
また、笑うんだろう。
別にへっちゃらだと、島川に言ったように。
しょうがない。
それしか、やり方を知らないんだから。
「セブンガールズ」映画化プロジェクト
クラウド・ファンディングサイト:MotionGallery https://motion-gallery.net/
2015年12月25(金)クリスマス 0:00 公開開始
2016年2月22日(月)ゾロ目の日 23:59 終了
目標達成金額:3,500,000円
(公開日より見ることが出来ます)
※クラウド・ファンディング公開前夜祭 12/24 0:00 クリスマス・イブ 劇団前方公演墳オフィシャルYoutubeチャンネル「前方公演墳の裏」内において、 クリスマスプレゼントとして、先行でクラウド・ファンディングに掲載されるPVを公開いたします。
Twitter:https://twitter.com/7girlsmovie