今、決まっていること、わかっていること、全て説明した。
中にはピンと来ていない劇団員もいるにはいた。
けれど、多くの劇団員の目の色が変わった。
劇団前方公演墳の俳優たちは、元々、様々な目的を持っていた。
旗揚げ当初は、歌手を夢見ていた劇団員や、アイドルを夢見ていた劇団員もいる。
公演を重ねるごとに舞台の魅力に取りつかれて、のめり込んでいった。
今は舞台が大好きで、この劇団をどうやってもっともっと前に進めようと考えている。
でも元々舞台俳優になりたかった劇団員なんて数える程度しかいないのだ。
殆どの劇団員は、映画俳優になりたくて、何をしていいかわからなくて。
そこにこの劇団という道があっただけだ。
織田稚成が言った。
「俺、すっかり忘れてたよ。
今日も映画を観てから稽古に来たのに。
俺、映画俳優になりたかったんだった。」
そんなことを言っていたけれど、忘れているはずがないんだ。
自分の中にちゃんと残っているから、映画だって観に行く。
心のどこかで、続けていれば映画に出ることもあるかもしれない。そんな期待をしているはずだ。
織田は、久々にときめいたそうだ。
映画を作ろうぜ。
その壮大な計画に物怖じするよりも先に、まずときめいた。
もちろん、半分冗談のレベルだけれど。
金子透は、カンヌ助演男優賞取っちゃうかも!なんて言い出す。
やろうよ、それ、やろうよ。別に挑戦してもなんの損もないじゃん!
そう言う。
上田奈々は、小さな声で。
やろう。それ、やろう。やるしかない。それしかない。
・・・と、何度も何度もつぶやく。
中野圭は言う。
「別に今回の自分の役になんかなれないかもしれないけど。
そんなの関係ないでしょ。それ、やれたら、本当、すごいでしょ。」
そう言う。
映画に出たい。
そんな夢を持っている人は恐らくこの世の中に何万人といると思う。
でも実際に映像作家をやっている主催の劇団に所属していて。
この人の脚本を一番最高に演じることが出来るのは自分たちだと信じていて。
それで、舞台を続けている。
17年以上も、毎週毎週日曜に集まっている。
そんな人たちは、そんなにいない。
作り上げてきた濃密な空気を、スクリーンに投影できる。
そんなメンバーは、ここにしかいない。
おいら、ひとりぼっちの夢の話をした。
こんなことをやろうと思ってるんだって話した。
そのためには、こんなに大変だけど。
もし、実現すればこんなに面白いんだぜって話した。
青臭い。
十代の会話のようだ。
ひとりぼっちの夢ではなくなった。
一瞬でなくなった。
十年以上一緒にいる仲間たちが、自分の事として、やりたいと立ち上がった。
これ以上の味方はいない。
・・・いや、もっといるか。
いつも応援してくれるお客様たちもいる。
たくさんの人の夢に変わった。
泣いても良かったかもしれない。
一緒にやろうと言ってくれた人がいたんだから。
正直、それぐらい感動していたんだ。
一緒にやるという言葉に感動してしまったんだ。
それでも、まだまだ涙を流す時じゃない。
それは、もっともっと先の話。
このBLOGはカテゴリー分けしてある。
今はまだ序章。
大勢の夢になったこの先。
もうすぐ、序章は終わる。
おいらたちは、日本の小さな劇団だけど。
世界にチャレンジしようとしている。
夢だけど。
夢じゃない。