劇団前方公演墳の代表作「セブンガールズ」の4度目の再演が千秋楽を迎えた。
耳に残る、空から降ってくるようなあのカーテンコールの拍手。
たくさんのお客様の、あの表情。
公演が終わって、おいらは考えていた。
このまま次の公演に進むだけでは何かが足りない。
まだまだ他にやれることが、やるべきことがあるはずだ。
何か忘れ物をしてしまったような、そんな歯がゆさを覚える。
終戦直後。連合軍による占領直下。
パンパンと呼ばれた娼婦たちの物語。
「セブンガールズ」
彼女たちは、歌い、舞い、笑い、泣いた。
まるで夢か幻のように、あっという間に通り過ぎていった。
劇団前方公演墳という劇団が旗揚げをしてから17年の歳月が経った。
いくつもの作品が生まれて、再演を重ねた作品ももちろんある。
けれどこの「セブンガールズ」は特別にお客様に愛された作品だと感じる。
この作品をもっとたくさんの人に届けたい。
この作品をもっとたくさんの人に観てほしい。
そんなことを思っていた時に、突然、思いついた。
「セブンガールズ」を劇場用映画化するべきだ。
笑われるかもしれない。
何を言ってるんだ?と言われるかもしれない。
それがそんなに簡単なことじゃないことは誰にだってわかる。
でも自主映画では意味がない。
自主映画では、やはり、今の劇団のファンに観てもらうだけになるからだ。
そうではなくて、今、現代に生きる人々に観てほしい。
そう思うなら、やはり、劇場用長編映画しかないと思った。
今日まで様々なことをやってきた。
舞台はもちろん、音楽活動や、ショートフィルム、お笑いライブ。
本当に数え上げると一体いくつになるだろう?
でも、その全ての活動を足しても足りないぐらい、これが大変だとわかってる。
それでも、やるべきだ。
そう思った。
なぜなら、おいらたちは、たくさんのたくさんの人たちに恩返しをしなくちゃいけないからだ。
劇団を応援してくれるお客様はもちろんだ。
10年以上応援してくれる人だって、中には亡くなったファンだっている。
或いは、劇団員の家族だ。
いつまでも、舞台に立つおいらたちを応援してくれる。
そして、辞めていった劇団員たちにもだ。
今でも劇団を気にしてくれている、かつての仲間たち。
それから、今まで支え続けてくれた多くのスタッフさん。
様々な活動の中で出会ってきた、多くのプロフェッショナルの方々。
そういう全ての人においらたちは恩返しをしなくちゃいけないんだ。
今まで応援して、応援し続けて、本当に良かった。
そう言ってもらえるようにしなくちゃいけない。
まだ、ひとりぼっちだ。
一人で何ができるわけでもない。
今までだって、これからだって、たくさんの人に協力してもらって初めておいらは何かを成してきた。
きっとそれは、今回も変わらない。
夢のような話だ。
夢なのかもしれない。
今、この時から、夢を現実にするために色々と調べなくちゃいけない。
必死で走り回らなくてはいけない。
絶対に出来る。
絶対に出来ると信じている。
世界の片隅から名作が生まれる。
父の命日に。
墓参して願った。
父に出来なかった恩返しを、必ずしようと、願った。
小野寺隆一